とりあえず、年内の星撮影の総括として、アストロトレーサーについて書いておこうと思います。
目次
今回は、アストロトレーサーのことについて書いて、今年の星撮影のまとめとしたいんですが、O-GPS1を購入して長いですが、今年もだいぶ使いました。
私が、星景を撮るときは大体7割くらいがアストロトレーサー使用で、後の3割は比較明合成用だったり、高感度固定撮影だったり、リアルレゾリューションシステムだったりします。
[rakuten:murauchi-denki:32327530:detail]
ぶっちゃけ、これから星景を撮るのに、カメラを買おうとしている人がいるとすれば、私は、PENTAXを強くお勧めします。それほどアストロトレーサー機能が便利です。
PENTAXは一般的にAF(オートフォーカス)が少し弱いといわれていて、それはまあ野生動物などを撮ろうと思えばそうなんですが、こと、星景に関しては、AFはまったく使いませんので、さっぱり一切全然関係ありません。そして、日常で使う範囲でならAFも特に問題はありません。ついでにいえば、PENTAXで動きものを撮っている人もいますので、工夫とやる気次第ではその点もクリアできないこともないようです(たぶん…)。
加えて、PENTAXのカメラは、カメラでは写りにくい(ので、カメラを改造したりする)とされている赤い天体も比較的よく写ります(特にK-5Ⅱsがそういわれますね)。ここもおすすめなポイントです。
あと、高感度に強いのもプラス査定です。特に、「アクセラレーター」を搭載した、K-70以降の機種は、高感度のノイズがかなり低減されていて、ISOを積極的に上げていくこともできます。
来年には11ー18mmという星空用と言われるレンズも予定されています(APS-C用)ので、レンズの面でも不足はなくなるだろうと思います。フルサイズ用にはすでに15-30mmというのもありますしね。
アストロトレーサーのすすめ
というわけで、PENTAXで星を撮るのに欠かせない、アストロトレーサーについて、ちょっとこの間、撮りながら、色々思っていることを雑感的にまとめておきます。
(作例をいくつか追加しました)
順不同で、アストロトレーサーを使った写真を並べてみます。
ひとつひとつ撮影条件を書くのがめんどいのでもう割愛しますが(適当…)、それぞれ、PENTAX純正の20-40と、10-17、タムロンの90mm、(今はなき)サムヤンの14mmなどで撮っています。
見ての通り、天の川も相当濃く写すことが可能ですし、(月と金星の写真やオリオン大星雲の写真のように=これはタムロン90mm)天体だけ追尾すれば、それをぶれずに追うことができます。(2019年2月に発売されたDA★11-18mmの作例も追加しました)。
なんなら、淡い黄道光もきれいにうつります。
そして、レンズメーカーがバラバラなように、純正以外のレンズでもほぼ問題なく動作するというのも強みです。
で、おさらい。
アストロトレーサーは、PENTAXのデジタル一眼にO-GPS1という別売りのGPSユニットをつけることで使うことができるようになります。また、K-1とK-3Ⅱには、このGPSが内蔵されているので、そのまま使うことが可能です。
使うと、ボディ内手振れ補正の技術を応用して、星が動く方向にセンサーを動かして、星の動き(日周運動)をキャンセルし、星を点像で写すことができます。
普通はこれは、ポータブル赤道儀などを使って実現するのですが、PENTAXなら約60gのGPSユニットをつけることだけで可能になるわけです。
アストロトレーサーは「簡易赤道儀」機能と紹介されることが多いのですが、これは、なんというか、かなり控えめな言い方だと思います。確かに、簡易な赤道儀的機能であることは間違いではないのですが、ポータブル赤道儀とは違う独自の機能性も持っているのではないかと思います。
実は、私は、流星群の時に輻射点を追う目的でポータブル赤道儀についても調べていたのですが、手持ちのタイムラプス用ターンテーブルで対応しようということにしてしまって、結局、ポタ赤の購入には至っていません。
なので、ポタ赤と比較してどうこうというのは差し控えますが、アストロトレーサーならではの優れた点というのが色々とあると思います。
★アストロトレーサーのおすすめポイント
1、設置が楽
約1分で設置できます。
GPSユニットが位置を測位し方位を測定したら、準備完了です。方位を測定するために、精密キャリブレーションというのをやるんですが、カメラを持ってぐるぐると回す、という知らない人が見ると謎のアクション。
↑こういうの。実はきっちり縦横でなくても、もっと曖昧にぐるぐるまわしても構いません。
上手くいかない時は方角を変えながら3~4回やるとうまくいきます。方角を変えながらというのが重要です、これを知るまでは同じ方向むいてやってましたが、うまくいかず大変でした。(といっても2~3分ですが)
2、構図が自由自在
アストロトレーサーは、カメラ自体を動かすわけではないので、構図の自由度が非常に高くなります。
なんなら、カメラを地面に置いてしまってもいい。それでも星を追尾してくれます。
地面すれすれの低い位置に設置したり、場合によってはカメラを斜めに設置したり、構図が気に入らないならちょっと場所を移動したりと、自由に、柔軟に使えます。
傾き検出用センサー(加速度センサー)と、向いている方位と、GPSによる位置特定によって、カメラが自動的に判断して、星の追尾をしてくれます。割とハイテク。
少し歩く程度なら、再度の精密キャリブレーションは必要ないなというのが実感です。十分位置を測位してくれます。気になるなら、再度キャリブレーションするにしても1分です。
そして、この場合はアストロトレーサーは必要ないかなとおもったら、手軽にオフにすることももちろんできます。
自由。フリーダム。
3、軽い
まじで、軽い。乾電池込で公称61gです。軽い。
K-3ⅡやK-1に至っては0gです(内蔵してるので、(笑))。
軽すぎ。
4、追尾能力
仕様|GPS UNIT O-GPS1 | RICOH IMAGING
この追尾能力は、公式ページに、公表されていますが、最長5分(300秒です)。
一応APS-Cで200mm(つまり換算300mm)にも公式に対応しています。ので、私は星景メインであまりしないのですが、星雲や星団を撮ることも可能です。
十分な実用追尾能力を持っていると言えます。
なにせ、リアルレゾリューションシステムでは1画素の幅で動かして4枚写真を撮るだけの精度が出るボディ内手振れ補正機構=シェイクリダクションですので、星を追う精度が低いわけがありません。
ただ、最長で使うよりは、だいたい、30秒から(超広角でも)2分くらいが一番おいしいところではないかと思います。(あまり長くなると周辺の像が乱れ、地上のブレも大きくなるので。星だけ撮るなら2分以上伸ばすのもありかもしれません…が、高感度で追尾時間は30秒~1分ほどで多枚数撮って、後処理でスタックした方がノイズレスで撮れるように思います)
ちなみに、カメラの向く方角や機種によって限界が少しずつ違います(詳細は上のリンクの公式参照)。KPは望遠側での追尾可能時間が短い、どうも、センサーの可動範囲が機種によって違うようです。KPは小型なのでここが弱いようなのですが実用面では特段問題は感じません。
★一方でデメリット
1、地上がブレる
これは、赤道儀にも言えることですが、星が流れない分、地上が流れます。
この問題を根本的に回避することはできないのですが、スイートスポットと言える露出時間があるなと思ってまして、APS-Cで10mmなら60秒程度、20mmなら20~30秒程度なら地上のブレはあまり気にならず、一方で星はシャープに移ります。
※ちなみに2019年1月時点の試行錯誤到達点はこちら。
ちなみに15mmで30秒〜40秒。20mmなら20〜30秒、35mmは10〜20に落ち着いています。アストロトレーサーが5秒刻みにできるなら、最長を5秒縮めたいですね。地上ブレ対策。
— YamamotoFHironaga (@fourier2010) 2019年2月3日
いや素直に固定で撮ればと思いつつ、追尾しちゃうスタイル。
公式にこの間色々要望を書いては送っている☺️うざがられてないか?🤔
アストロトレーサーのタイマー設定は、10秒刻みなのですが、本当は5秒刻みだともっと柔軟にこのブレ問題に対処できるなと思いつつ。ちなみに、北を狙う場合は、星の移動量が比較的少ないので後の数字が使えますが、東西または南方向を狙う時は星の移動量が多いので、前の数字というような形です。
星景写真において、アストロトレーサーは「ほんの少し」固定撮影よりも露光時間を伸ばせるシステムだと考えてもらうと良いですね。しかし、その「ほんの少し」で地上のディテールが出てきたりするので、無視できない意味がある…と。
某カメラ屋さんが、星景モード(ポタ赤などに設定されている、追尾速度を半分に落として、地上と星をほどほどのブレに抑える機能)の実装を提言されていましたが、もし、ここがブレークスルーするなら歓迎したいですね。機能があるというのは大事なことで、取捨選択ができるといいですね。
KPから、アストロトレーサー+インターバルが可能になっていますので、今後のアップデートにも期待です。
2、輻射点を追えない
これは、頭の方にも書きましたけど、流星群の時に使いたい使い方なんですよね。でも物理的にカメラを動かすわけではないので、アストロトレーサーでは実現できません。残念。
輻射点を追い続けたら、そこを中心に合成処理して、流星雨のような画像をつくることができますので。
ただ、それだけのためにポタ赤を買うのも高いかも…。
私は、前に買っていたタイムラプス用のターンテーブルが、1時間に15度動くのを思い出して、これで、精度は出ないでしょうけど粗々、輻射点を追おうかと思っています。私の用途ではこれで十分です。この前のふたご座流星群の時に使えばよかったですね。忘れてました。
※2018年ペルセウス座流星群で、タイムラプス用ターンテーブルを輻射点を追う目的で使ってみました。3時間駆動させるとバッテリーがなくなる上に、かなり星を追う精度が低いですが、まあないよりましです。これだけのためにポタ赤が欲しいかといわれると、欲しい。そんな予算はないけれど(笑)
パンフォーカス星景
で、実は、この間、試し続けているパンフォーカス星景というのがありまして、何回か書いたりもしてるんですが、…。
これとか。
これとか。
これは、アストロトレーサーの構図が制約されない柔軟さ+KPの高感度耐性で一応なんとか形になってきていまして、いくつか、フォトコンに送ってます。
フォトコンに送ると、公開できないのでもどかしいのですが、ほどなく落選が決まれば(!)晴れて載せられると思います。
一応、送ったものと別構図のものを、一枚アップしておきます。
山茶花とオリオン。そろそろ椿も咲くのではないかと思いますので、椿でもやってみたいです。山茶花と似てますけどね(笑) 花弁が一枚ごと落ちるのは山茶花、花ごと落ちるのは椿、だそうです。
かんたんに説明すると、普通の風景を撮るように、絞りを絞ったうえで、過焦点距離でピントを出しています。で、若干、露光量が追いつかない分は高感度とRAWからの現像でなんとかするという方針。
一応、オリジナルな撮り方です!本当かな…でも、ほかでこうやって撮ってるというのも聞いたことはないので、オリジナリティはあると思うんですが、いやはや、まだね、クオリティがそれほどではなくて、だから、どうしたというほかない。
これ、絞ることで星に光芒がでるんですよね。これには写ってない(写ってるのは送ってしまった)のですが、マイナス等級のシリウスだとかなり大きく光芒が出るので惑星とかでも出るんじゃないかと思います。1等星クラスだと光芒がまだ小さいかな。
で、光芒をきれいに出すのに星を追尾する必要があってその時にアストロトレーサーが活躍しています。
今は10ー17mmフィッシュアイズームを使っていますが、11ー18mmが出ればそれを使ってやってみようと思っています。
夏の天の川とかも映るんじゃないかとおもいますけど、どうなんでしょうね。
↑こちらも参考にどうぞ。
というわけで。アストロトレーサーについてよもやま話でした。
重ねて。
さすがに、他のメーカーでシステム組んでる人をPENTAXに移行してきてくれとはなかなか言いづらいですが、これから星景を撮ろうと思ってカメラを探しているのであれば、PENTAXとアストロトレーサー…お勧めしちゃいます。
アストロトレーサー、いや、本当に、スマートな機能だと思います。
今年もアストロトレーサーで星景を撮り続けましたが、来年も頑張ろうと思います。ということで、今年の星関係はこれが最後の記事!あとは書評だ…。書評はまだあきらめていない。まだ、年内いける…!
[rakuten:r-kojima:10223525:detail]
関連記事
↓ちなみに、星空(星景写真)の基本的な撮り方はこの記事にだいたいまとめておきました。ご参考にしてください。
↓私の写真が、PENTAXの「とっておきphotoコンテスト」に採用してもらえました。アストロトレーサー販促用(?)として、お店などに展示される予定です。(2018年8月)
アストロトレーサー「ほぼ固定撮影」なるものをはじめました。
パンフォーカス星景2019の到達点です。
【2021年7月追記】
K-3markⅢからアストロトレーサーType2が実装されました。星景用に、恒星の日周運動の半分の速度で追尾するモード。なかなか使える感触です、以下の記事でレポートしています。
ブログランキングに参加しています。
クリックいただくと、…特に何もありませんけど、管理人が喜びます。