シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

「花と星を撮りたい」パンフォーカス星景への道のり

というわけで。

この半年間、パンフォーカスで星景を撮ろうということで、試行錯誤してきたんですが、一応の到達点に達したので、書き残しておこうと思います。

目次

 

露光中ピント絞り可変法ができないので

そもそも、「星と花を一緒に撮りたい」、というところから始まっているパンフォーカス星景

この星と花を一緒に撮るというのは、すでに「露光中ピント絞り可変法」という先達が実用化してきた撮影方法があって、私もこれをすればよいと思っていたんですが。

露光中ピント絞り可変法 - Google 検索

簡単に言うと、露光中に、絞りを開けた状態で星を撮り、そのまま絞りを絞り切ると同時にピントを近くに合わせ、フラッシュなどで前景を照らして花を撮る、という技法。これで遠景と近景に両方ピントを出す。しかし、これ、撮影するのに絞りリングがいるんですよね。

PENTAXのデジタル用レンズ=DAには基本的に、小型化のためか絞りリングがついていないんですね。

そして、絞りリングのついているSAMYANGの14mmも買ったんですが、これが、また、こけて砕いたのは以前述べたとおりです。↓

shironagassu.hatenablog.com

なので、私は、私の持ちうる機材で、どうにかして、花と星を撮ることを、余儀なくされたわけです。諦めが悪い。

 

ここまでが前置き。

 

パンフォーカス星景・現時点での到達点

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PENTAX KP レンズ DA 10-17mm FISH-EYE 焦点距離10mm

ISO8000 SS60秒 F8  アストロトレーサー使用

2018.02.04 高知県土佐清水市にて

 

現時点で到達したパンフォーカス星景の作例。一応、それなりに見られるようなものになってきました。

スイセンの花の先にオリオンがあって、花と星という意味では一応形にはなっている。…といえますかね。どうかね。まあ、まだまだかもしれないが。一応なんとかなってると思いたい。

 

撮り方について 

①過焦点距離

焦点距離でピントを出す。焦点距離10mm、F8なら、約65cm。F9なら、60cm弱。これでピントを出すことで、その半分くらいから無限遠まで全域でピントが出るということになります。目測でもいいですが、ちゃんとやるならメジャーが必要です。すでにここで少し面倒くさい。

※許容錯乱円を0.02としてiPhoneの無料アプリで計算しています。厳密にいうと、A4サイズのプリントを30cmで見る場合にピントが「合っているように見える」とかそういう感じです。

許容錯乱円 - Google 検索

私は許容錯乱円について詳しく解説できないのでグーグルの検索を貼っておきます。興味のある方は調べてみてください。

※付け加えると、星へのピント出しは普通はシビアで、無限遠付近で1mmもピントリングを動かしたらボケてしまうくらい繊細です。普通は。なのに、過焦点距離でピントを出した場合、なぜか星にもピントが合います。いったい、なんでなんですか?逆に誰か理由を教えてください…。

 

ISO感度

・絞っている分、露光量が足りないので、ISOを8000まで上げる。で、1分露光。

※ISOを6400で押さえたい場合には、F6.3くらいでやってみるのも一つのソリューションです。被写界深度とISOノイズと星の写り具合とを見ながら、まだまだ色々試しているのが現状です。

2018年9月末現在の到達点でいうと、焦点距離10mmでF6.3がベストかな、と。この場合の過焦点距離は約80cm、つまり40cmから無限遠までピントが出ます。露光は、ISO4000で40~80秒ほど。というのが、バランスが良いという結論になっています。

ちなみに、11mmだとF7.1で86cmの過焦点距離というのがギリギリかなぁと、11-18の発売を見越して考えています。

 

③照明

手前はLEDで照らす。ISO8000なので(※8000でない場合でも高ISOで撮らないといけないのはほぼ間違いないので)、花に光を直接当てると一気に白飛びします。ので、レフ板などで間接光を低照度で照射。それも5秒くらいで十分です。それ以上だと飛ぶ。

私は手のひらをレフ板代わり(通称・菩薩ビーム)にして、2mくらい離れてから光を照射しています。一方から当てるとカメラの影が花に落ちる場合があり、その回避のために5秒のうちに少し移動して多方向から照射しています。

菩薩ビームの利点は、手をすぼめることで照射範囲をある程度任意にコントロールできること。難点は、肌色を反射するので、少し色がかぶること。白い手袋とかいる?いや、めんどいな…(笑)

※2018年9月末に、とうとうフラッシュを導入しました。これで、多少風があっても花の揺れが止まる。これは…早い目に、導入すべきだった…!

shironagassu.hatenablog.com

 

 

④副作用:星の光芒

・絞っていることで星に光芒が出る、という副作用が起こる。太陽を除く全恒星のうち一番明るいシリウスなら六つ切りサイズでプリントしてなんとか判別できるくらいなので、それよりも明るい惑星(木星や金星、今年最接近する火星など)なら良い光芒が出るはずです。たぶん。(まだ、良い巡り合わせがない)。火星は…熱い気がするんですよね。パンフォーカス星景で撮れれば。

 

⑤アストロトレーサー

アストロトレーサーを使う。使うことで星を流さず、きれいな星の光芒を出す。

※…なんだかニッチになってきましたね。

10-17mmフィッシュアイズームなら、1分くらいなら、あまりブレが気になりません。花は風で微ブレすることはいたしかたないというのもあります。花は、LEDを照射している5秒だけ大きくブレなければなんとかそれなりに写ります。

あと、もしかすると焦点距離だけでなく魚眼であること(周辺の像がゆがんでいること)が、プラス作用として働いていてブレが気にならない可能性もあります…、今後の研究課題です。手元に比較対象になるレンズがない。

いずれ、PENTAXが発売するという11-18mmレンズを入手したらそれでも試してみようかとは思っています。もしかしたら10-17mmの方がパンフォーカス星景には向いてるな、ということもありうるかもしれません。

 

・ちなみに、PENTAX KPにはエッジ抽出というモードがあって、これはピントが出ている所だけ表示するという機能です。これが、花にピントが出ているかどうかわかってすごく便利です。

 

弱点

・弱点その1

パンフォーカスなので、ありとあらゆるものが写る。写真としてみたとき、主題以外のノイズが入ってきやすい。ので、現像時に必要のないところは、焼き込み的に、暗くするなど工夫する必要があります。

ただ、あえて、中景に人などの意味のあるものをいれることで、星+人+花という写真が撮れる気はしています。

イデアとして記しておきますが、基本ボッチである私は、この構想は実現できないかもしれない。無念。

星+花+人ポートレイトという夢のある可能性はある。可能性は。やったことはない。アイデアとしては。誰かやってほしい。ボッチには無理。

 

・弱点その2。

露光中ピント絞り可変法と比べると、必ず焦点距離の短いレンズでないといけないので、星を大きく切り取れない、ということになります。ので、星景としてはなにかしらの工夫が必要。

夏の天の川は狙っています。あれなら、…焦点距離短くても目立つ。はず。写れば。

 

というわけです。

実のところ、PENTAX KPの高感度耐性とアストロトレーサーがあることで撮影が可能になっています。エッジ抽出も含め、PENTAXの技術をあますところなく使用した撮影法…。

こうやって詳しく書いても、ぶっちゃけ機材構成がニッチ過ぎて、誰かほかにやってくれる人がいるのか、あまり期待できない。という気はしている。淡い期待。

 

試行錯誤しつつ、撮影法はだいたい確立したので、ここからが本番ですね。

作品としてちゃんとメッセージが乗った写真が撮れるかどうか。

なので、これから春にかけて咲いてくるいろいろな花で試しつつ、写真としてブラッシュアップしていこうかと思います。

 

焦点距離の出し方・2019年3月時点追記

うむというわけで、焦点距離の出し方について補足。

新たに記事を起こしても良かったのですが、分散するよりまとまった方がいいか、というのと、11-18mmでパンフォーカス星景を撮った時に新しい記事を起こそうかということで、とりあえず、合わせて19年3月時点での到達点を記しておきます。

 

といっても過焦点距離…考え方は何となくしかわかっておらず、もっぱらiPhoneのアプリで出しています。便利な世の中じゃわい。

 

SetMyCamera

SetMyCamera

  • Bluestone Pond
  • 写真/ビデオ
  • 無料

play.google.com

こういうアプリで出します。

上がiOS用、下がアンドロイド用。

 

これでセンサーサイズ(機種)と、焦点距離(35㎜換算ではなく実焦点距離)、絞りを設定して、過焦点距離といわれる一番パンフォーカスが深くなる点を見つけます。

ちなみに、センサーからの距離です。レンズの先端からではなく。

なので、見た目はかなり被写体に寄れます。

 

その後、メジャー(100均にあり)を使い、大体過焦点距離にある何かしらの物体で、マニュアルフォーカスでピントを出します。で、ピント固定。

 

そして、一応その半分から、ピントが出るので、被写体に寄って撮る。

ただ、ピントが出るのは半分よりもう少し向こうかな…というのが実感ではありますが…。メジャーの過程がアバウトなので、厳密にうまく過焦点距離でピントが出てないのかもしれませんね。

 

普段使うフィッシュアイズームであれば、10mm、F6.3でだいたい80cmの過焦点距離になります。

 

後は、高感度をどこまで使うか、と露光時間をどこまで伸ばせるかですが、ここで、アストロトレーサーが威力を発揮し、星が点像になる固定撮影許容時間を大幅に超えて露光時間を伸ばせます。

前景(主に花)は基本的にフラッシュを焚くことで動きを止めるので、地上ブレはあまり気にせず思いっきり長い露光時間で行けます。1分とか1分30秒とか。(近景はフラッシュで止まりますが、遠くの山などはボヤけます。ボヤけてもいいものを遠景におくのがコツです)

 

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ここ最近、比較的うまくいったものを掲載しておきます。

上は一枚撮り、下は一枚目のみフラッシュを焚いた上で、カメラ内比較明合成です。

 

撮り方は割と完成をしてきました。

もっと焦点距離が短いレンズ(マイクロフォーサーズ用など)…例えば7㎜などがあれば、F3.5で71cmほどで過焦点距離になります。が、マイクロフォーサーズPENTAX機はないので、アストロトレーサーが使えず露光時間を伸ばせない…。

まあ、ただ、マイクロフォーサーズの7mmだとだいたい30秒の露光で星が流れ始める計算なので、感度にもよりますがF3.5ならそこそこ撮れそうです。

 

アストロトレーサーが使える機体だとフルサイズより、APS-C向きの技法ではあります。APS-Cだと10mmくらいのレンズが比較的安価に手に入るので…。

 

まあ、レンズがあればどのフォーマットでも撮れそうですが(笑)

 

APS-Cで、比較的手に入れやすいレンズで、かつ、アストロトレーサーを使いつつやる、となるとPENTAXAPS-C機ということになります。

私が謎にこだわるAPS-Cのバランス」については、以下の記事をお読みください。ちょっと長いので閲覧注意です(笑) 

shironagassu.hatenablog.com

 

なお、私がうまく説明できない過焦点距離について非常に詳しく説明してくれている記事を引用させていただきます。

私の適当な認識とは雲泥の差なので、ぜひご覧ください。

tatsumo77.hatenablog.com

tatsumo77.hatenablog.com

 

今までの過程

shironagassu.hatenablog.com

shironagassu.hatenablog.com

 ↑ちなみに、今までの道のりの記録はこちら。進捗度合いから言えば、K-50からKPにカメラが変わったことが大きい。軽いシンギュラリティが起こった。

 

 

つまり、この3種のアイテムが揃うことで可能になるパンフォーカス星景。

機材がニッチ(笑)

もし試したら、ぜひ、教えて下さい。他のレンズでの写り方や、他の機材の場合などいろいろと興味があります。

 

まあ、合成したらいいじゃん、という突っ込みはあると思う。

そうね。…まあ、そうね…。

比較明合成とか、私も別に合成は日常的にしてるわけなので、花と星と合成しちゃあいけないということは ないですね。

まあ、ね。

そこはすきずき。としか言いようがない。

 

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