シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

【書評】科学者18人にお尋ねします。宇宙には誰かいますか?

地球外に生命を探す「アストロバイオロジー宇宙生物学)の分野が、今、盛り上がっている(ような気がする)。

 

本書は、そのアストロバイオロジーにかかわる研究者18人に、1、研究内容について、2、「生命の定義」について、3、地球生命はどこから来たのか、4、地球外生命が発見されるのはどんなところ、5、どうすれば地球外「知的」生命体を発見できるか、6、知的生命体が見つかった時にどうするか、7、知的生命体がいる世界にはどんな社会があるか、8、人類は、太陽系を超えて天の川銀河に広がる生命か、と8つの質問を投げかけ、その答えを聞いていく。

 

この設問だけを見ても非常に多岐にわたる知見が必要とされるアストロバイオロジーの世界への入門編として、本書は最適な一冊といえる。

 

 

アストロバイオロジー

アストロバイオロジーの分野は、これまでの枠組みを超えて、多様な研究者が集ってきているのが、特徴といえる。

天文学、惑星科学、生化学、地球物理学、微生物生態学、地質学、分子進化学、地球化学、比較生物学など、様々な分野の研究者があつまりつつある、非常にホットな研究対象といえる。

 

最新の科学は、ひとつの専門分野で取り扱えるものを大きく超えて、分野横断的な性格が強まっているともいえるが、アストロバイオロジーはそれを体現する研究分野の一つだといえるだろう。

 

そもそも、宇宙に生命を探す、ということが、「まとも」な科学的命題になっていることが、ひとつの科学の進歩を示しているともいえる。

あいつぐ系外(太陽系外の)惑星の発見、地球以外の太陽系内の星(火星やエンケラドゥスなど)への生命存在可能性への期待の高まり、また分子生物学の進展や、探査機や観測機器など宇宙探査技術の向上など多くの進展があいまって、宇宙に生命を探す機運が高まっているといえる。

アストロバイオロジーは、これからも注目を集めていく分野のひとつであることはまず間違いない。

 

宇宙に生命を探す意義

宇宙に生命を探す方法は一つではない。

系外惑星の光を観測によって分析し、その大気の中にバイオマーカーを探す方法。

バイオマーカーとして有力視されているのは、酸素や有機物だ。そして、もし、葉緑素を使って光合成をする生物が存在するとすれば、その葉は、赤外線を強く反射し、系外惑星からの光に赤外線が強く表れるレッドエッジとよばれる特徴を示すというのも有力なバイオマーカーとされている。

 

また、伝統的(!)にはSETI(Search for Extra-Terrestrial Intelligence)と呼ばれる宇宙に地球外生命からの電波を探す方法もある。

知的生命体が存在するならばその交信方法として電波を利用する可能性が高いという点に注目し、それを探すという方法だ。

これは、1960年にアメリカの天文学者ドレイクが提唱したもので、これまで、100以上のSETIプロジェクトが実施をされているが、まだ、可能性のある電波は受信ができていない。

しかし、受信ができない、というのも重要な科学的意義を持つわけで、今後もこのSETIは続けられていくだろう。

 

太陽系内の星ならば、直接探査機を送って調べることも可能になるだろう。

このように、地球外に生命を探すと一口で言ってもそのやり方は多様だ。そして、それぞれが日々進歩をしていて、いつか、地球外に生命の痕跡を見つける日が来るかもしれない。

 

そして、地球以外に生命を探す意義というのは何か。

人類は、あくまで、地球で生まれ自分も属する一つの生物体系しか知りえていない。その中で、生物学が発展し、生命とは何かを深く探求しているわけだが、地球外に生命が見つかれば、その在り方から、生命とは何かについて新たな知見を得ることになるだろう。

また、前述の天文学者ドレイクが提唱した有名なドレイクの式というものがある。

天の川銀河に存在する電波を使う高度文明の数

天の川銀河で1年に生まれる恒星の数×恒星が惑星を持つ割合×1つの惑星系のなかで生命に適した環境の星の数×生命に適した惑星に生命がうまれる割合×誕生した生命が知的能力を持つまでに進化する割合×電波による通信を行う文明を持つ割合×文明の継続期間 

 ドレイクの式は後になればなるほど、不確定な要素が強くなる。

観測することで、知的生命体がすぐには見つからないとしても、この値が少しずつ埋まり、ドレイクの式の解の範囲が決定されていくことが重要だ。はたして、この銀河系に文明はいくつあるのか?500万という研究者もいれば、1(つまり人類のみ)という研究者もいる。これを少しずつ観測事実に基づいて埋めていくことがこれから必要になる。

 

それは、最後の文明の継続期間(L)にどのような値が入るのかという点によっても大きく変わってくる。

それは人類はどれだけの期間存在しうるのかという問いとも一方では同義でもある。

宇宙に生命を探すことの意義は、人類とそれをはぐくんだ地球生命について深く知ることにもあるのだろう。

 

 

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