さて。降りしきる長雨なので、また機材話に付き合ってもらおうと思いまして、このエントリーを立ち上げました。
私の現在(2020年7月)のメイン機PENTAX KP、リコーイメージングのAPS-Cフォーマット・中級機として、発売は2017年2月となっています。私は、2017年11月に購入しました。足掛け3年。
以前、「星撮影用としてのPENTAX KP」という記事を書いているので、総論的なものはそこで展開しているのですが、今回は、足掛け3年にわたり使用してきての、長期間使用のレポートという形で新たにまとめてみようか、と。
PENTAXとしては、APS-Cセンサーの新型フラッグシップ機を、この秋にも出すと言われていまして、そうすると、KPがもう一段お得な価格になるかもしれません。希望的観測。
というわけで、さっそく、書いてみましょうか。
今回は、あくまでKPを長期間使用して感じる「使用感」をメインに書きたいと思います。もちろん、星撮影=星景写真を撮るということを念頭にした評価です。
星撮影用としてのPENTAX KP long-term review
私の普段の撮影スタイルをまず、前提として、お伝えしておかないといけないと思うのですが、基本的には、一枚撮りのRAW保存・現像です。アストロトレーサーの機動性を生かして細かく位置を変えつつ、歩きながら撮ることが多いですね。
それをLightroomやPhotoshopを使って現像しています。
比較明合成(連続撮影したものを合成して星の軌跡を描く)もある程度します。
あるいは地上と星の別撮り合成もまれにしますが、主には、比較明の際に車のヘッドライトの回り込みなどを避けて、地上景を選ぶという使い方が多いです。
1、画質
KPの画質については、非常にダイナミックレンジが広いという印象。特にRAWで撮影しておくことで、暗部にディテールが良く記録されています。丁寧に現像していくと、暗部のディテールを浮かび上がらせることが可能です。
特に、20分長秒露光という撮影方法では、ISO100で撮ることが多いので、そうすると、この暗部のディテールの残り具合が生きてきて、素晴らしい。
また、夕焼けや朝焼け、月明りなどと絡めたときの、空のグラデーションの表現は非常にきれいで、トーンジャンプなどが起こることはほぼありません。非常に滑らか。
2、ISO感度
最高ISO感度819200というのが、センセーショナルでしたが、もちろんこの最高感度で(作品撮りとして)使ったことはありません。
ISO4000が一つのスタンダードで、そこまでなら、細部のディテール低下(粒状感、ノイズ感増)はありつつも、おおむね信頼できる画質を出してくれると感じています。冬場はこれを6400まで上げても構わないかな…と。夏場は逆になるべく3200までで撮りたいかな。(熱帯夜のセンサー温度への影響は、顕著に画質低下として表れます)
このISO感度上限は、主に、星景でいうと前景の表現に関わってきます。
街中などで、環境光がある場面だと、ISO6400でも、前景に非常に良好なディテール感が残ります。逆に、暗闇の中、低照度になればなるほど、粒状感、ノイズ感は増していきます。そこを見極めて、ISOを決める必要があります。迷ったら4000にしておけば、おおむね良いかなと思います。
この上の桜の写真は、ISO6400なのですが、手持ちの照明を地面に向けて照射しジワリと反射させて撮影をしています。そうすることで、桜という細かい被写体ですが、画質として全く問題がない前景になりました。
ただ、照明を照射するという行為は、他に撮影者がいる場合(あるいは人の生活圏に近い等でも…)は、「迷惑行為」になる可能性があるので、注意をしてください。星景撮影の流儀もいろいろとあって、その場にある光だけで撮るというスタイルもあります。私も照明を使うこと自体を否定するものではないですが、その辺は互いに尊重しつつ、撮影していきましょう。
3、堅牢性
3年弱使用してきて、不具合らしい不具合はありません。ピントの精度ズレで調整してもらったくらいですかね。
ただ、夜間の撮影がメインということで、注意を重ねてもなかなか事故を避けられず、実は、数度転ばせるなど、シビアアクシデントも起こしているのですが、傷はともかく機能面で問題は起きていません。(レンズは一つダメにしました)
私はシルバーカラーを使用していますが、シルバーは、フィールドカメラとしてみたときにはやはり傷が目立つかもしれません。私のも、おでこに大きな傷がついてしまった。
ダストリムーバルⅡ(超音波によるセンサーダスト防止機能)も良く効きます。しかし、私は、メンテナンスも兼ねてこれまでに2度、メーカーにセンサークリーニングを依頼しています。ファインダーも含め、非常にすっきりきれいにしてくれるので、定期的に出すというのもひとつの選択。
堅牢性は、タフ、ということで良いと思います。
2020.10.26追記 先日、3年目目前にモニターに不具合が出る。どうも、チルトをしたときに接触不良を起こしているようです。修理のため、KPはしばし戦線離脱。5年延長保証入っておいてよかったが…一番いい秋の時期を逃すことになりそうです。
こんな感じで、ある角度から背面モニターが白くなる。星を撮るにはかなりの致命傷。延長保証書見ると平日電話対応のようなので月曜にでもかけてみるか。 pic.twitter.com/Zbq3rPciYM
— YamamotoFHironaga (@fourier2010) 2020年10月24日
4、機能面
アストロトレーサーインターバルという機能が現在唯一実装されている機種がKPなのですが、これが意外と使用頻度が高い。
どういう場面で使うかというと、雲が流れているが、星が見えているような状況で、ベストの雲の形を引き当てるのに、インターバル撮影をする。その時に同時にアストロトレーサーも使いたいということが、非常に多いです。
また、上の写真のような流星群撮影の時も、基本的にアストロトレーサーインターバル撮影です。
アウトドアモニターというバックモニター表示の光量調節機能も常用です。撮影時は最低照度にしておくことで、バッテリー消費と暗闇になれた目への刺激を抑えることができます。
バッテリーのもち具合に関しては、基本的に、バッテリーグリップをつけて、D-LI90P(大容量リチウムイオンバッテリー)を入れておくことで、私の撮影スタイルとしては不足なく使えます。(ちなみに、純正品バッテリーではなく互換品使用です)バッテリーグリップなしだと、それなりに腰を据えて撮ろうと思うと不満が出てくると思います。また、10時間などの長時間インターバルだと、バッテリーグリップをつけていても足りない可能性は高いです。
後、細かい所では、構図微調整機能がなかなか面白い。構図を微調整するだけでなく、この機能を利用して、建物などのパースペクティブをある程度コントロールしたり、ゴーストやフレアを避けたりという使い方が可能です。(この記事の末尾に関連エントリーを貼っておきます)
5、レンズも含めたシステム構成
センサーサイズが、APS-Cである、ということで、システム全体を比較的コンパクトにまとめられるというのが大きな魅力です。星景撮影は、三脚など全体として、荷物は多くなりがちなので、コンパクトというのは、ひとつの大きなアドバンテージです。
これは、三脚の性能や角型フィルターの大きさなどにも関わってくるので、全体としては結構大きな違いになります。
そして、昨年2月に、PENTAX純正の超広角レンズDA★11-18mmが発売されたことによって、星景撮影用としてのPENTAX APS-Cフォーマットは、一つの完成形に至りました。
なので、できれば、ぜひ、セットで入手してほしい。
ただ、他の小型レンズ、例えば、HD DA15mmF4 Limitedなども、選択肢になるのが、アストロトレーサーのあるPENTAX機の良いところ。他社製のレンズもあまり多くは供給されていませんが、アストロトレーサーは問題なく動作するので、そういう選択肢もあります。レンズは固定観念を持たずに選んでみると面白いかもしれません。
私は、普段は、KPにバッテリーグリップ+11-18mmをつけた上で、10-17mmフィッシュアイズームと、20-40mm Limitedを持って行っています。(上の写真)
6、番外編・見た目
KPは、J limitedという公式カスタムが、発売されています。私も欲しい。いまだ欲しい。
新型機の対星景用の中身によっては、むしろ何とかJ limited入手にかじを切ろうかという思いすらある。そういう意味では、KPは機能面として、大きな不満がないということでもあります。
あと、グリップ交換式なので、グリップをカスタムできるというのも謎のおすすめポイントです。私は、金色や青いのやら、木製のやらをつくって遊んでいます。
7、改善があればなお良い点
不満があるとすれば、背面モニターの画質でしょうか。グラデーションなどがうまく表示されない時があるように思います。また、背面モニターはチルト機構なのですが、もう少し可動範囲が大きい機構ならなお良かった。
あとはやはり、星撮影用としてみた場合のバッテリーのもち。本体に入るのが、低容量のバッテリーなので、そこが残念。ただそれはグリップ交換式とトレードオフではある。
実は私の使い方では、フラッグシップ機である必要はない可能性が高い(特にAF性能や連射速度・バッファなどはあまり必要ない…)ので、細かな点をマイナーチェンジしたKPⅡが出れば、実はその方が、良いのかもしれない…。
作例とギャラリー
関連記事
前回のKPレビュー記事です。網羅的に書いてますが、長いです(笑)
アストロトレーサーの解説記事。
ここからはレンズレビュー。
機能面、撮り方など。
グリップ作成記録。
以上。KP、長期間使用レポート(Long-term review)でした。
ではでは。