よし。週末は、満月期だったし、ほとんど雨だったので(でも夜は晴れ間ものぞいたのだけど)、撮影に行っていないので、とうとう、この記事を書いておきたいと思います。
星撮影用としてのHD PENTAX-DA FISH-EYE10-17mmF3.5-4.5ED。
フィッシュアイズームの異名をとる、独特のレンズです。
ブログを振り返ると2022年10月31日に、購入しているようです。
この時に、コーティング違いの旧smc DA10-17mmを手放しています。
HDとsmcというのは、PENTAXのコーティングの名前でして、HDの方が新しい。
色々なレンズがこのHDコーティング化されて、リニューアルされています。
旧版のレビューはこちら。
基本的に、smc版とレンズ設計は変わっていないようなので、良さはほぼ踏襲しています。上位互換と言ってよいでしょう。
どこが違うのか、大体わかってきた(ような気がする)ので、ではいつものように、長所から書いていきたいと思います。
星撮影用としてのHDフィッシュアイズーム
余談ですが、smc版のフィッシュアイズームは、私が、カメラを入手後、最初に買ったキットレンズ以外の交換レンズなので、大変愛着がありました。手放す時は惜しかったですが、次の使い手に渡れば、それが一番でしょう。
ちなみに、この10-17mmと、スターレンズの11-18mmは、PENTAXのAPS-C機で、星景を撮ろうと思えば、ぜひ、揃えたいセットです。
長所
対角180度の画角は健在、周辺画質の向上
10mm広角端で撮影すると対角180度という、とにかく広い画角で撮影できるというのが、旧版から続く伝統のフィッシュアイズームのユニークネス。
これが、非常に便利です。上に出している2枚のように、むしろ、広いところをとるよりも、こういう狭い領域を撮る場合に、前景から星までの重層的な被写体を入れることができて、しかも自然風景だと、歪みもあまり気にならないということで、頼りになります。
そして、周辺画質はHD版では向上していると言ってよいと思います。
このフィッシュアイズーム、中央のピントと周辺部のピントがわずかにずれるんですよね。それは個体差かもしれないのですが、smc版ではより顕著でした。真ん中である程度、星にピントが合っていると思っても周辺でピンボケ(星がリング状にボケる)していて、使えなかったことが何度かあったのですが、HD版になり、それが少し改善しました。
ただ、HD版でも、やはり、中央と周辺部のピントが少しずれている気はするので、そこは気を付けないといけません。このことは、短所でも書きましょう。
被写界深度の深さも健在
とても深い被写界深度を誇るので、前景と星を同時に撮りたいときに非常に便利です。過焦点距離を使うことで、この特徴をさらに、強めることもできます。
「パンフォーカス星景」として、技法化しているのですが、最近あまりやってないですね。
また、やらねば。
全体的な画質の向上
これも、個体差なのかもしれないという注釈はいれつつもですが、画質は向上していると思います。
旧版は、実はF5.6まで絞って画質を担保していましたが、少なくともHD版のこの個体は、開放のF3.5から、十分な画質を出してくれます。
こういう天の川の細かい描写も、比較的ディテール感が出やすい。
ただ、11-18mmの星像と比べてしまうと、やはり、一段見劣りはしてしまいます。
10-17mmが悪いというよりは、11-18mmが良い(スターレンズですしね)ということだと思います。
フードキャップが落ちづらくなった
フードキャップが被せ式なのですが、これが落ちる、というのが、smc版の大きな弱点でした。
このせいで、旧版のフードキャップはボロボロに。
HD版では、出っ張りに合わすような形の被せ式に変更されたことで、結構しっかり嵌っており、落ちることはほぼなくりました。
合わせて、フードが組み込み式から、取り外し可能になり、フードを取り外すことで、フルサイズ機(K-1)で撮影すると、全周魚眼ライクな写真が撮れるようにもなりました。
フードキャップが落ちづらい点は、夜、撮影に出る時には、安心材料になります。
リアフィルターとの相性良し
フィッシュアイズームの特徴として、周辺まで、星像が(多少の画質低下はありますが)丸く写るというメリットがあります。
そして、リアフィルターを使うことで、その特徴をさらに、生かすことができます。
リアフィルターホルダーがついているわけではないのですが、後玉付近に、フレアカッターがついており、そこにソフト効果のポリエステルフィルターをテープで貼ることが可能です。
ノリ跡が残らないタイプのテープで貼るのが良いです。
ただ、ポリエステルフィルターがもうなかなか手に入らないんですよね。
私も、もう一枚を切った残りしかなくて、大事に使っています。
再販されませんかね。
追記 「星のつぶやき」さんのCP+2024の報告記事を読んでいると、ケンコーが「リアプロソフトン」なるポリエステルフィルターを出すらしい(画像を見ると6月発売の予定ぽい)。これは朗報。
いずれにせよ、リアフィルターでソフト効果を出した場合、非常に広いアステリズムに対して明るい星を強調することができます。
上の、北斗七星から、アークトゥルス、スピカに至る春の大曲線を一枚撮りで納めて、かつ星を強調できるのは、この10-17mmならではでしょう。
色収差も改善
画質の向上は色収差の改善にも現れています。
smc版で撮った時に、強烈なパープルフリンジが現れていましたが、HD版では軽減されているように思います。あまり星撮影で気になったことは今のところありません。
これがF5.6まで絞らなくて良くなった最大要因でもあります。
ズームの利便性も健在
10-17mmのズームの利便性ももちろん健在です。
17mmにしたら、癖の強い広角レンズっぽくなります。
また、例えばDxOなどのソフトで補正をかけることで、歪みをほぼなくすことも可能です。
ただ、魚眼レンズは、歪みをどう使うか、という部分が醍醐味でもあるので、歪ませないなら、普通の広角レンズで撮った方が良いのかもしれません。
短所
では、短所にいきましょう。
中央部と周辺部のピントのずれ
中央部と周辺部のピントがわずかにずれているように感じます。
ただ、しっかり合わせれば、両方にピントを出すことは可能です。
ですので、中央でしっかりと合わせて、撮影をし、周辺の星像の状態を確認してから、本撮影に入るようにするルーチンを組んでおく必要があります。
これを怠ると、帰ってきて、泣くことになります。
また、テープによるピントの固定ですが、この時に合わせてズームリングまで固定しておくのが大切です。ズームが動いてしまうとピントがわずかにずれるので事故の確率が高まります。
防滴非対応
どうせなら、HD化するにあたって防滴対応にしてもらいたかった。
水辺で撮る場合も多いですし、いつ、雨が降るとも知れない天候に攻めの姿勢で、星を撮りに行くときも(ほぼないですが)、ゼロではない。
けれども、そうすると内部のシーリングもしないといけないですし、コストも高くなるのかもしれません。
筐体のつくり
前述の防滴対応もそうなのですが、筐体としては、金属製ではありますが、重厚感とかタフさはないですね。
もっと、堅牢なつくりにしてもらいたいという思いはあります。
HD10-17mm、フィールド特化型として、防塵防滴と、筐体を堅牢設計にしたものがあっても良い……と無責任なことをいいますが、そんな需要はないかもしれません。
かなり高くなってしまうなら、私も買い替えるか微妙です(自分で言っておいて)。
F値は明るくはない
他社では、非常に明るい広角レンズも出てきている昨今、レンズ設計自体が古いこともあり、F3.5開放という物足りないスペックになっているのは否めません。
ただ、そこはPENTAX。カメラの高感度耐性に加え、アストロトレーサーを使うことで、受光量自体は確保することは可能です。
アストロトレーサーType2になって、時間的にもかなり長く引っ張れると思うのですが、私は、最近はあまり引っ張らず、ISO6400で30~40秒程度で撮っています。
まさに、上の写真がそういう撮影条件。
旧版のレビューの天の川が派手なのは、これを1分近くまで伸ばしていたというのもありますし、その日の空の条件が良かったのもあるのですが、何よりも、その当時派手現像にはまっていたということです。(当時はあれで抑え気味の感覚でした。人の感覚とは何とも当てにならない)
というようなところでしょうか。
というわけで、全体としては、smc版の完全上位互換になりますので、星撮影用として使うなら、HD版を入手するのが、良いだろうと思います。
これが来てから、信頼度も増し、11-18mmとの使い分けもできるようになりました。
ユニークな良いレンズだと思います。
ということで。ではまた。
余談
この、ON1の新作ノイズ除去ソフト(ON1 NoNoise AI New Version 2024)。すごくよさそうな気配がするんですが……。
貯金中の身ですが、やぶさかではないと思いつつ、しかし、やはり、貯金中というのはこういうのを耐え忍ばないといけないと思うので、泣く泣く見送ろうかと思います。
まあ、本を買う時は、軽やかに制約を乗り越えてしまうのですが、他のことには、財布の紐が基本堅い。
ブラックフライデーを待つぞ!(11月末は遠い)
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