シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

星景サルベージその56 「真珠星」

うーむ。

ひとつ、ふたつ、撮りたい案件があるのだが、天気がよろしくない。

こういう時は、サルベージするに限る。

ということで。

 

さっそく、今年初のサルベージ。

 

「真珠星」

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PENTAX KP レンズ DA 35mm  焦点距離35mm

ISO3200 SS20秒 F2.4 アストロトレーサー、ソフトフィルター使用 

2019.1.6 高知県高知市にて

 

まだ冬も盛りですが、このごろになると深夜2時ごろ、北東の北斗七星から続く春の大曲線が、東の空へと伸びているのが良く見えています。

北斗七星のひしゃくの部分の曲線をそのまま東へと伸ばすと、うしかい座のオレンジ色に光るアークトゥルス、そして、このおとめ座のスピカへと夜空を横切る大曲線が描けます。これを春の大曲線といいます。終点は、スピカのその先にある小さな四角形のからす座。星は一か月経つと2時間早くなるということですので、もう少し季節が進み春になれば、もっと見やすい時間に見えてきます。1月で2時なら、3月だと22時頃なのでずいぶん違いますね。

 

私は、このスピカの和名を真珠星(シンジュボシ)と覚えていたんですが、最近、私の座右の書となっている「日本の星名事典」によると、実のところ、スピカを真珠星と呼ぶという伝承は伝わっていないということらしい。

いや、この日本の星名事典、本当に、良く調べられていて、一級の仕事だと思います。実はこの本、机に置いて、撮った星の写真を見ながら、和名は何と呼ぶんだろうという実践的な使い方をしていまして、実はまだすべてを読み下しているわけではない。開くたびに新たな発見があり、面白いです。

ちなみに、もうひとつの座右の書として、カール・ケレーニイ著「ギリシアの神話 神々の時代/英雄の時代」も置いていて、これも星にまつわるギリシア神話が、どういうものなのか、引きながら調べたりしています。でもこちらはもう少し星座に特化したものも欲しいかなぁという気がしますね。でも、この本はギリシア神話を多角的に諸説含めて収録しているので、なかなか重宝します。

と、閑話休題

 

というわけで、スピカの伝統的和名としてシンジュボシというのは、どうも、違うらしいと。真珠星のもとになったのは、福井県で1937年に記録されたシンジボシというものらしい。「シンジボシ(6月の8時頃上る。白色で小さい)」(宮本常一)という伝承をもとに、野尻抱影氏が「多少強引であるが」と断ったうえで、白い星というところからの連想でシンジボシを真珠星と解しスピカと結び付けたことで、この和名が広がったという経過があるようである。なるほどなあ。一ヶ月に2時間ごと早くなるとすれば、たしかに6月に8時ごろ上るというのはおかしいですね。スピカとは時間が合わない。

著者の北尾浩一氏の言を少し引いておきましょう。

本書では、「スピカを真珠星」と言ってはならない、と記しているわけではない。真珠星は、スピカにぴったりの名前であるからこそ、おそらく野尻抱影氏と内田武志氏が二人とも真珠星と考えたのではないだろうか。しかし、「古くから日本で伝承された」と言ってはいけない。現段階では、フィールド調査、あるいは文献調査で真珠星が暮らしのなかで形成され伝えられている事例に出会うことができていないからである。

そういうことなのか。

確かに写真を見てもらうとわかるように、スピカは数ある星の中でもとりわけ白く、真珠に見立てたくなるのはよくわかります。

しかし、この日本の星名事典を読んでいるとわかるんですが、星の和名というのは、もっと生活に密着しているものが多いんですよね。農機具だったり漁具だったりそういうものが星に見立てられて、本当に暮らしと星が身体感覚として結びついている。そういう部分からすると、真珠星というのはちょっと、ロマンチックすぎるかなという気も確かにするのです。

うーむ。真珠星、素敵な名前ですけどもね。

とりあえず、これから、私はスピカを真珠星と呼ぶときは心の中で「 」をつけて、「真珠星」としたいと思います。

 

ということで、サルベージでした。

ではまた。

 

 

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