というわけで、前回、予告した通り、今回はこの話です。
昨年、コロナにかかっていけなかった、京都は糺の森で開かれる「下鴨納涼古本まつり」に行ってきた話で、更新をしておきたい。
(書評…タグでいいかな…。)
第37回下鴨納涼古本まつり
納涼と名がつくわけですが、今年の古本まつりはとにかく暑かった。
強烈な日差しに、京都の盆地特有の…高知とはまた違った暑さ。
水分補給をしながら、この本と人の間を逍遙…そぞろ歩く。
まあ、とにかく歩いても歩いても本。ありとあらゆる本があります。
ただ、この人生で読んできた本によって、私の感受性がつくられていますので、その感受性の中で、出会うべき本に出会います。
理想としては、全ての本をフラットに受け入れて、その中から、奇跡的な偶然の出会いを見つけたいのですが、本当にこれだけ本があると、全ての情報を受け入れるだけのキャパシティーがこちらに足りません。
なので、見えている本しか、見えない。
その中で、厳選してきた本は以下の通り。
下から行きましょう。
①石元泰博「色とかたち」
写真家・石元泰博氏の写真集ですね。氏の多重露光の写真が納められた一冊。
高知県立美術館にアーカイブがあるので、県美にいったときにはいつも寄ります。
②林完次「星をさがす本」
同著者の同シリーズであろう「宙ノ名前」という一冊を持っていて、気になってゲット。豊富な写真で、星座の物語が綴られています。
この辺りは、サイエンスノンフィクションのレジェンド/スティーヴン・J・グールドの著作。特に「ダーウィン以来」は、ダーウィンの提唱した進化論の誤用や曲解に対して、グールドがダーウィンの論に基いて正していく著作で、非常に名著です。
俗論的な進化論の歪みを解消してくれるので、読んでもらいたい一冊(2冊)ですね。
⑥⑦野尻抱影「星三六五夜 上・下」
そして、こちらは、日本の星界隈のレジェンド/野尻抱影の上・下本。日記調で、星を巡る短文エッセイが365日分ちりばめられた著作。
彼が、星を見るのと同様の感性で、社会や人々をまなざしています。
珠玉。
⑧ジョージ・オーウェル「カタロニア賛歌」
これは、ちょうど、京都のお供にもっていった本がソルニット「オーウェルの薔薇」だったのもあり、縁を感じてゲット。
ソルニットの「オーウェルの薔薇」は、ディストピア小説「1984」で名高いオーウェルの2つの側面、舌鋒鋭い全体主義への批判者であったことと、庭の薔薇を精魂込めて育てたナチュラリストだったこととを統合して、社会に問題提起するとともに自然も愛する新たなオーウェル像を提示する意欲作です。余技として薔薇があるのではなく、この薔薇に向かう情熱が、社会への鋭い眼差しへも結びつくという統合。これはソルニット自ら指摘していますが、ソロー的ですね。
その中で、このスペイン戦争に参戦した時のエピソード(生死の境をさまよう重傷を負う)がおさめられた「カタロニア賛歌」が引用されていたので印象に残っていました。
⑨D・チャモヴィッツ「植物はそこまで知っている」
植物の「知覚」を扱ったユニークなサイエンスノンフィクション。最近は、植物の地下根と菌類による森自体の共生ネットワークなどが指摘されており、植物に関する知見もアップデートされていっています。この分野では、ステファノ・マンクーゾの著作が有名ですね。
と。
これだけでも、カバンがパンパンになったのですが、他の本屋にも行ってきてしまいました!すいません!(もう謝るしかない)
他の本屋にも行ってきたよ
6冊。これも下から行きましょう。
①李琴峰「言霊の幸う国で」
これは、恵文社でゲット。
台湾にルーツを持つ小説家・李琴峰氏が、オンラインで受けた中傷などを小説の舞台装置として(まさに力づくで)ねじ込み、事実に基づきながら、しかし小説として、フィクションも織り交ぜながら、文学に昇華をした一冊。
オンラインでの差別言動は、この小説の李琴峰氏の筆力の前にねじ伏せられます。それは苦闘でもあるのですが、この闘う様子を見て、励まされる人が必ずいると感じます。
読んでいて、「楽しい」という本ではないのですが、読まされます。この分厚さですが、私は2日間で読んでしまいました。
今の時代が記録されている。この時代を生きる者として、読んでおいてほしい一冊。
この同時代性を強く帯びることで描かれる社会がとても実在論的で、実体を感じ、小説に命が吹き込まれていると感じました。おすすめ。
②岡真理「彼女の『正しい』名前とは何か」
シスターフッド書店・kaninさんで買った一冊。
シスターフッド(女性の連帯)書店を標榜しているので、前回の訪問の時も寄ろうと思ったのですが、男性一人で入るのが申し訳なく、今回、妻についてきてもらい初めて訪れました。
選書がすごく良かった。
色々と興味深い本がありましたが、この岡真理さんの一冊をゲット。
③現代思想・帝国特集号
④鷲田清一「悲鳴をあげる身体」
⑤ドリアン助川「あん」
この3冊は、朝、京都の町を撮ろうとブラブラしていると、線路の脇に、なぞの古本露店が。
掘り出し物ありのステッカーが見えますが、まさに掘り出し物。
1冊100円なので…300円という破格。
鷲田清一氏については、何か読みたいなと思っていたので、セレンディピティを感じました。こういう偶然の出会いはある。この本屋(?)の名前はよくわからないのですが、場所は覚えたので、今度もまた、掘り出し物を求めて行ってみます。
⑥ヴァージニア・ウルフ「ダロウェイ夫人」
これは、今年1月だったかな…京都に訪れた時にも、お邪魔したマヤルカ古書店さんでゲット。
これは、逆に、以前、見させてもらった本のラインナップならば、ヴァージニア・ウルフ置いているんじゃないかという目論見のもと行ってみたら、見事にあったという、逆運命の一冊。
「ダロウェイ夫人」と「波」があってしばし悩んだのですが、「ダロウェイ夫人」をゲット。
ということで、都合15冊。
レンズ貯金のくびきから解き放たれた本ハンターと化して、積読を増やしまくってきました。
いかん。このペースはいかん。また、そのうち、貯金始めます(笑)
ではまた。
今年1月、5月、8月と京都に行っている。行き過ぎ問題。
↓は、1月古書店巡りをしたときの記事です。
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