シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

書評「極端豪雨はなぜ毎年のように発生するのか」

さて。

いつ以来なのか、正直覚えていない…、ちゃんとした書評を書くのは…。

うちのブログは、星景写真と科学本のブログと銘打っていて、忘れたわけではなかったし、本は読んでいたのですが、写真論や実在論哲学など際限なく(節操なく)読む分野を広げた結果、サイエンスノンフィクションを読む頻度が減ってしまって、書評を書くまでは至らないままで来ていました。読書記録を見てみると、AIとかビッグデータ関係はかなり読んでたんですけどね。

 

今回は、おそらく、先ほど確認したら2020年5月以来の、実に3年超振りの書評

 

取り上げるのは、川瀬宏明著「極端豪雨はなぜ毎年のように発生するのか 気象の仕組みを理解し、地球温暖化との関係をさぐる」(化学同人、2021年)です。

実は、大雨が来るたびに、地球温暖化との関係を疑うことなく書いてきたのですが、そもそも、その点をちゃんと理解していないと思い、今回、読んでみた次第です。

 

 

気象研究者の著者が、豪雨の降るメカニズムを丁寧に解き明かしながら、地球温暖化との関連を紐解いていきます。

 

極端豪雨の降るメカニズム

まず、著者が強調するのは、最近の極端豪雨は、地球温暖化をその直接原因とはしていないということです。豪雨が降るのは、その豪雨を降らす、局所的なメカニズムのゆえであって、そこに間接的に地球温暖化の問題を見ることはできるにせよ、まずは、その豪雨を降らすメカニズムへの理解自体が大事だということです。

 

その一つは、広域に雨をもたらす低気圧と前線の関係です。

強い雨が降るのは、上昇気流が生じ積乱雲が生まれるというメカニズムが一般的のようですが、その典型が低気圧が発達した台風です。台風と大雨は切っても切り離せません。

 

あるいは、梅雨や秋雨をもたらす、梅雨前線、秋雨前線も豪雨をもたらす可能性が高いと言えます。特に、梅雨前線が、本州から九州にかかる6月下旬から7月が、特に危険性が高く、過去にも何度も豪雨が発生していることを実証的に説明していきます。

梅雨前線が絡むといってもメカニズムは多様で、前線近くで豪雨になる場合、前線の南側に発生する線状降水帯で局所的な豪雨が降る場合など様々なメカニズムがあるとのこと。しかし、いずれにせ、梅雨前線の南側から継続的に大量の水蒸気が流れ込むということが必要であるようです。

 

この最近、注目されるようになった(気がする)「線状降水帯」ですが、その定義は

次々と発生する発達した積乱雲が列をなした積乱雲群によって、数時間にわたってほぼ同じ場所を通過または停滞することで作り出される、線状に伸びる長さ50~300㎞程度、幅20~50㎞程度の強い降水を伴う雨域

とされているようです。

これが形成されるためには、同じような場所で積乱雲が発生、発達し続ける必要があります。その形成過程のひとつがバックビルディング型といい、ある場所でつくられた積乱雲が、風下に流れて、すぐさま次の積乱雲がつくられるという形で、次々と積乱雲が形成されていきます。流された積乱雲の後ろに積乱雲ができるということで、バックビルディングというようです。

この積乱雲群がさらに複数集まるなどして、記録的な豪雨を生み出します。

 

その他、地形による豪雨の誘発効果(もともと雨の降りやすい土地、もちろん四国・高知もそのひとつですね)や豪雪の仕組みの解説など、気象についての基礎知識がもれなくわかる入門書としても重宝する内容となっています。

 

地球温暖化との関係

これらの基本的な異常気象、豪雨のメカニズムを説明した後に、地球温暖化が豪雨に与える影響について、わかっていることが示されていきます。

気温が1℃上がると含まれる水蒸気量が約7%増えるという点から、産業革命以後約1℃上がったとされる現在の温暖化した気温の影響を、観測結果から逆算したり、産業革命以後の工業化の寄与がなかった場合のシミュレーションなどを駆使して、猛暑や豪雨への温暖化の影響が示唆されることを示しています。

地球温暖化によって、雨が降る場所はさらに雨が降りやすくなり、逆に乾燥した場所は乾燥が強まるということも起きます。

そういう意味でも、気候の極端化に、地球温暖化が影響していると言えます。

このままいけば、今世紀末には産業革命以後4℃の気温上昇となるといわれており、国際的には、2℃を十分に下回る1.5℃が大義的な目標値になっています。

この目標値に押さえきれるかどうかが問われる状況ですが、それでもあと0.5℃上昇するわけですので、現在よりも地球温暖化が進行することは避けられない状況です。

 

著者は結論として、

豪雨はもともと自然の変動として定期的に発生していたが、2010年代は偶然にも多く発生した。さらに、観測や情報の多様化、SNSの普及でそれらが届きやすくなったことで、頻繁に起こると感じられるようになった。加えて、地球温暖化による上乗せがあった。

としています。

特に日本は災害が多い国であり、気象情報に普段から注意し、早めの避難行動など被害を出さない対応も、社会全体で強めていく必要があります。

その上で、地球温暖化の影響を下げるために、この地球温暖化自体への温室効果ガス削減の取り組みも加速させなければなりません。

 

豪雨とそれに及ぼす地球温暖化の関係を科学的に見る、非常に学ぶことの多い一冊でした。

 

ではまた。(今度はこんなに間隔をあけず、書評を書きたい…)

 

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