シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

PENTAX K-3 MarkⅢ 、その「不合理」な選択

曰く。

機材は、長雨と共にやってくる。

うむ。私が言っているだけなんですけど。

機材を迎える時というのは、概して、梅雨や秋雨など天候不順の時期が多い…。雨の時というのは撮影に行けないので、ネットで機材を見続けることになるんですね。なので、致し方ない。

 

さあ。

いや、というわけで、来てしまいました。

しまいましたという表現がふさわしい。想定外に早く入手できてしまった。

PENTAXの放つAPS-Cフラッグシップモデル、K-3 MarkⅢ。

 

正直、もっとずっと先になると思っていたんですよ。

しかし、色々な要素が重なった結果、自分でも完全に想定外のタイミングでゲットしてしまった…。まず、気持ちが追い付いていない(笑)

 

なので、やはり、こういう時は、この気持ちを言語化しておかないといけない。

ということで、したためておきましょう。その選択の意味を。

 

K-3 MarkⅢという選択

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Go on a journey.

K-3 MarkⅢは、どんなカメラなのか。一言で言うと、PENTAXが昨年発表したステートメントを体現したカメラ、ということになります。

 

写真が好きだからカメラを造る。
写真を愛するからこそ、写真をよく知るからこそ、写真好きに選ばれるカメラを造る。

対話するように撮れるカメラを理想とする。
感性と創造力を駆使し、被写体と言葉を交わすように自分だけの画を創れるカメラをめざす。

撮影プロセスまで愉しめるカメラにこだわる。
ファインダーを覗く、ピントを合わせる、シャッターを切る、画を創る。すべての「撮る快感」を追求する。

数値では測れない領域まで挑む。
数値的な高性能だけを求めるのではなく、開発者自身の感性をも盛り込んで深い味わいを追求する。

ユーザーの「写真体験」を資産とする。
ハードウェアだけでなく、撮る、創る、鑑賞する、すべての心躍る「写真体験」をユーザーと共有したい。

この5つのステートメントに形を与えたのが、K-3 MarkⅢというカメラ。

 

と言っても、よくわからないかもしれない。(私も、よくわからん(笑)

光学ファインダー(OVF)に拘り、高難度の加工が求められる新素材ペンタプリズムを搭載し、APS-Cセンサーでありながら、フルサイズ並みの大きさのファインダーを載せた。と。

それは、どういう意味があるのか。

OVFの「撮る楽しさ」というのが、良く言われることですが、その楽しさの本質は、想像力を掻き立てる部分にあるんだろうと思います。目の前の光景と会話するように、露光時間を決め、絞りを決め、構図を決め、そして想像力を駆動させ、一枚の写真を写す。

それは、良い意味で、予想を裏切られるという感覚なのではないか。

これを、以前書いたように、フェラーリスの新実在論になぞらえて、「抵抗」という概念で考えてみても良いのかもしれません。

 

撮影者は、写真機を通じて、この世界を撮る。

その時、世界は、撮影者の期待や予測を裏切って、知覚に抵抗=修正不可能性を残す。

フェラーリスの新実在論の)その力点は、知覚経験の抵抗、その修正不可能性にある。われわれの知識や概念的スキームに抵抗し、我々の存在から独立した感覚で捉えられる世界それ自身の実在を強調する。「我々の期待に反する世界の抵抗と、世界が我々に保持する意外性(surprises)は、どんな認識論的な構築からも独立した存在論的な実在性があると証明する優れた議論であるように見える」『実在論の新展開 ポストモダニズムの終焉』(河野勝彦、文理閣、2020年)より、強調は引用者

そう、だから、この世界は確かに実在する。その実在を、OVFは、そして K-3 MarkⅢは、証明し続けていく。

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撮影者から独立した「実在する世界」との対話。

それが、写真を撮ることの、一つの、本質的な意味であり、そのままならなさ、意のままにはならない抵抗こそが、私たちに驚きを与え、楽しませてくれるのではないか、と。

逆にいえば、今、その意味は根底から脅かされているともいえます。世界に写真機を向けなくても、最終的な画像=アウトプットを、AIを用いて、写真ライクに作成することも技術的には可能となってきました。この時、「写真」にとって、実在的世界は必要とされない。

だからこそ、私は、写真に対してあくまで実在論的アプローチをとりたい。AIが作成した「どこでもない、いつでもない」画像に、果たして意味があるのか、少なくとも私には意味が見いだせない。

ですので、実在論的アプローチを目指す私は、大げさに言えば、いつかは、このK-3 MarkⅢを手に取らねばならなかっただろうと思います。これは必然の出会いだ、と。

 

「不合理」な選択

しかし、一方で、この選択が、とても「不合理」なものだとも考えています。

実のところ、私のメインの被写体は、星景写真であり、ノイズやダイナミックレンジなど画質面からいえばフルサイズ機の方が、やはり有利です。

そして、PENTAXがK-3 MarkⅢに本気を出しすぎたことにより、フルサイズ機K-1 MarkⅡよりも、K-3 MarkⅢの方が高い。

どうしてこうなった…。

 

合理的に考えるならば、星景写真がメインの被写体である以上、このタイミングでフルサイズに移行する「べき」だっただろうし、完全移行しないまでも、手元に、フルサイズ機とAPS-C機の2つのセンサーサイズがあることで表現の幅が広がる…。

コスト面でも、K-1Ⅱにアドバンテージがあった。

 

また、モニターも、K-1Ⅱがフレキシブルチルトという可動域の広い機構なのに対し、K-3 MarkⅢは、モニターが一切動かない、不動。ノンフレキシブルモニター。

星を撮る時はどうしても角度がつくので、モニター動いてほしいんですよね…本当は。

 

そして、合理的ということでいうならば、電子ファインダー(EVFの方が、仕上がりを確認しながら撮れるという意味で、合理的なシステムだろうと思います。

ペンタプリズムという重いガラス部品を使わなくて良いので、本体も軽くできる。

また、本当に何度もいいますが、PENTAX本気出しすぎた結果、このペンタプリズムが高屈折率の新素材となり、高難度の加工が要求され、大変開発に時間がかかり、値段も高くなり、と、ある意味で「不合理」極まりない。

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合理性。

近代的主体という概念は、その成立過程において、人間の合理性を前提として発展してきました。「自由で、自律的」な近代的主体。自らの意志で、自らの行動を決めていける者、そこに合理的人間像――つまり、道理にかない、説明ができ、無駄がなく、能率的で、独立した、ある種の理想的人間が措定されている。

しかし、問わねばらないのは、私たちは、本当に、合理的だろうか?ということなのです。

いつも道理にかない、自分の行動を明快に説明でき、何事も無駄なく、常に能率的な行動をとり、確固として独立している?はたしてそうでしょうか。

私は、私たちは、本当は、不合理な存在なのではないか、と思うのです。

 

例えば、風邪をひくこともあれば、メンタルがへこむときもある、時に誤った選択をし、道に迷い、誰かのために自分のことは後回しにする、そんなこともあるかもしれない。

私たちはヴァルネラブル(傷つきやすい)で不完全な存在として、互いに応答し合いながら、不合理に生きざるを得ないのではないか。

そこに、生活というものの本質があり、非理想的な等身大の個別具体的人間像が見えてくる。それは、とても人間らしいことなのではないか。

 

だから、私たちは、時に「不合理」な選択をする。

星景だからフルサイズが良い?

コストパフォーマンスで見ても、K-1Ⅱの方がお得?

モニターは可動する方が便利?

OVFよりも、EVFの方が撮影効率が良い?

ええ、確かに、そうなんだろうと思います。その合理性をいったん全部飲みこんだ上で、あえて、この「不合理」な選択肢を選ぶ。

その選択は、少なくとも、多分に人間らしい。選択の理由としては、それだけで、十分なのかもしれない。

 

わずかな優位性

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K-3 MarkⅢは、だから、「不合理」な選択なのかもしれませんが、優位性がないかというと、それもまた違う。

そこには、小さいかもしれないけれど、優位性もあると思っています。

 

まずは、何と言っても、このK-3 MarkⅢ…なんとアストロトレーサーが進化してしまった。

アストロトレーサーというのは、PENTAX機に搭載されているGPSを利用したセンサー駆動による星追尾システムですね。これによって、星を点像で写すことができるわけです。

これに、星景用のType2なる新モードが搭載されてしまったのです。

センサーが動くということは、星は点像になりますが、その背景(前景)となる地上はブレてしまうということですよね。しかし、星の追尾速度を半分にすることで、この地上ブレを抑え、限界を伸ばすType2。

 

いやいやいやいや、やってくれたなあ。と。

私、公開されたK-3 MarkⅢの説明書を眺めていて、これを発見した時、普通に声が出ましたもんね。こいつはやりやがったなっていう。

もう、これを見たら、買わないわけにはいかないじゃないですか…、と。

本当、いろんな意味でやってくれましたよ、PENTAXは…。何度も言いますが、本気出しすぎなんじゃないですかね?勘弁してほしい。

 

これ、公式ホームページのアストロトレーサー部分のスクリーンショットなんですけど。

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いやいやいや、Type2のこと、書いてないし…!なぜなんだ…。なぜ書いてないんだ。見るたびに突っ込んでしまう。これは、ある種の罠だったのかもしれない。

あえて、書かないことで私のような、アストロトレーサーマニアをおびき寄せる巧妙な。本当、もう、あらゆる角度から、PENTAX…やってくれております。

これを見た時、謎のわかなくていい使命感がわいたのは事実です。Type2…使ってレポートしないと…という。

 

そして、このGPS追尾のアストロトレーサーに、O-GPS1という外付けGPSユニットを使うんですが、これが、リニューアルされて、O-GPS2というのが出るらしい。これもプラス査定ポイント。

精度と安定性が増すらしい。来年発売する…とPENTAX公式が言っている。

ホント?マジで?

となると、K-3 MarkⅢはGPSを内蔵していないということが逆にプラスにもなってくる。外付けを替えられるので。

私が、PENTAX機で星景を撮る大きな部分はこのアストロトレーサーにあるので、これは、参ったな。と。

もう買わないわけにいかないじゃないですか…。

 

また、レンズの面でも、やはりHD DA★11-18mmの存在は大きい。

PENTAX純正の、あえてこう言っていいと思うんですが、対星景撮影用スターレンズ

これが、DAカテゴリ、つまり、APS-C用なのも、実はとても大きかった。

どこかでせざるを得ないカメラの更新を、K-1Ⅱと迷った時に、でも、レンズは、11-18mmが良いしなあ…と。いやフルサイズでも、このレンズをテレ端側(18mm)にすると、撮れるらしいんですが、いやいや、でも、どうせならフルスペックで使いたいじゃないですか。ズームできるというのが、このレンズの良いところなんですよね。

このレンズもようやく使いこなせ始めてきて、PENTAXが本気出しすぎたK-3 MarkⅢとの組み合わせで、さらなる画質面での向上があるのか、気になるじゃあないですか。

いてもたってもたまらん、と。

 

それと…そうそう。

忘れてはならないのが、ISO上限160万の衝撃。

16万ではない。160万です。KPの倍…。

何を言っているのかよくわらない。

この高感度耐性を、ただ純粋に体験してみたいというのも、楽しみな部分でした。 

 

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でも、いや、K-3 MarkⅢ。

本当に高かったです。本気出しすぎ。

本当は、バッテリーグリップも欲しかったし、電池の予備も必要だし、UHS-II規格のSDカードも…と、K-3 MarkⅢを十全に使うには、まだ色々と必要なものがあるんですが、そこまで一気にはいけませんでした。

そして、地味に5年保証かけると高い(価格の5%分とられる)ので、もう、3年目くらいに何か不具合が起こったらその時の私がなんとかすることにして、未来にリスクをぶん投げました。

 

確かに、想定よりずいぶん早く入手できたんですが、そういうもろもろの犠牲の上に成り立っております。完成度は本体が手に入ったことで、70%くらいまでは行ったと思うんですが、後の30%がまだまだ長い…。

 

ああ、もし4、5年後くらいに次のカメラに更新しなければならない時は、ここら辺の価格でなんとかもう本当に勘弁してほしい。そして、5年後も…PENTAXがあってほしい…(切実)。

 

というわけで、また、今回も長々と書いてしまいましたね…。

まあ、良いでしょう。

これは、「不合理」な選択かもしれない。

だけれども、撮影の中で、きっと意外性を感じさせ、楽しませてくれるカメラに違いないと、謎の信頼感もあります。少なくとも、アストロトレーサーType2がついているので、この使いこなしだけでも、相当あれこれ楽しめそうです。

 

いずれにせよ、旅は続く。

新しい相棒と、また、星降る一夜、一夜を越えていきましょうか。

 

ああ、そういえば、想定外に購入時期が早まったことで嬉しい誤算が一つ。

ペンタプリズムキャンペーンに間に合いそうです。朗報。

www.ricoh-imaging.co.jp

 

ではまた。

 

んん?……今日、撮れそうじゃないか…?月曜なのに…。

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星撮影用としてのK-3markⅢについてのまとめは、こちら。

shironagassu.hatenablog.com

 

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