うーむ。
とうとう、…ああ、とうとう、この日が来ました。
…長かった。本当に長かった。
HD PENTAX-DA☆11-18mmF2.8ED DC AW。
いよいよ、我が手に。
【目次】
振り返れば、このレンズの開発が発表されたのが、2017年10月でした。
あれから、16ヶ月…失意の発売延期を乗り越え、たどり着いた2019年2月、ついに発売。うーむ、気長に待ち続けました…!(たまにレンズを買ってしまいながら(笑))
一応、おさらいをさせてもらうと、このレンズは、PENTAXが満を持して(持し過ぎて)放つAPS-C用、かつ星景撮影用純正超広角レンズです。星にも良いということは、もちろん昼間の撮影に使ってもディ・モールトベネ(非常に良い)。いや、まだそこまで使い込んでないので、多分。ごめんなさい、適当です(笑)そのうち、データがたまったら星撮影用としての11-18mmというのを書きますね。
よし、ああ、いやいや、もうこれ以上の御託はいいので、早速、何枚か出したいと思います!昨日雲にやられながら撮ってきました。
ファーストライト
23日から、24日にかけて、撮影にというわけでもないんですが、高知南西部幡多地方にいましたので、ファーストライトはそちらでになりました。いくつか順不同で。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO1250 SS50秒 F5.6
2019.2.24 高知県土佐清水市にて
まず、四国最南端・足摺岬まで星を撮りにいったのに、曇って星が見えなかった奴から行きましょうか。星のない星景という新ジャンルを確立する一枚。
これがトップになるだけはある意外と良い感じでして、左上から雲越しの月光が淡く海面を照らし、強い風の中岩には白波が立ちます。岩肌の質感がレンズの解像性能を物語っていて素晴らしい。
菜の花も咲いていましたが、こちらも雲が多い。四万十市にて。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO3200 SS50秒 F2.8 アストロトレーサー使用
2019.2.23 高知県四万十市にて
シラスウナギ漁と星も撮影。前日(後述)撮れなかったので、撮れてよかった。冬の風物詩ですね。冬の大三角とともに。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO1600 SS30秒 F2.8 アストロトレーサー使用
2019.2.24 高知県四万十市にて
ソフトフィルター使ったら、かなり派手になりました。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO1600 SS30秒 F2.8 アストロトレーサー使用
2019.2.24 高知県四万十市にて
シラスウナギ漁は船だけじゃなくて、岸からも獲ります。漁する一人をシルエットで。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO1600 SS30秒 F2.8 アストロトレーサー使用
2019.2.24 高知県四万十市にて
こちらは撮ろうと思ったら、シラスウナギ漁の漁船がみんな帰った奴。おそらく満潮が終わったんですね。満潮までじゃないとシラスが川をのぼってこないので。確かに後から調べてみたらこのころちょうど満潮の時間でした。この後引き潮になるんですね。
でも四万十川と星がきれいに撮れました。シリウスが見えますね。
PENTAX KP レンズ HD DA☆11-18mm 焦点距離11mm
ISO3200 SS50秒 F2.8 アストロトレーサー使用
2019.2.23 高知県四万十市にて
ファーストインプレッション
このレンズのファーストインプレッションは、非常に星景のことを考えて作られてるな、ということに尽きる。
まず予想した通りフォーカス位置を固定できるクランプが超便利。ストレスフリー。特にズームをした時に、すぐにフォーカスを変えて、またクランプできるのが、すごく良いです。
そしてマニュアルフォーカス時の、回転角が大きいため、ジャスピンの位置が、フォーカスリングを動かしていても少し幅があり、非常にピントが出しやすい。これは星を撮ることを想定して、そういう設計思想で作っているんでしょうね。
フィルター枠もありフィルターが使えるのもすごく良い。
そして描写も当然ながら精緻です。
重さはそこそこあって、今回はK-50も持って行ったんですが、それもあって、カバンがなかなかずしりと来るものがありました。そこはしょうがない。
重さに対して、雲台の性能が心元ないので、縦位置にするときは、L型ブラケットを使うようにしないとちょっと固定が弱いかもしれません。アップグレードしたいな雲台。
と、とりあえず思いついたことをいくつか、まだまだ特性を把握できておらず、レンズに撮らされてますので、じわじわ使い込んで自分の目のように馴染ませていかないといけません。
あえてAPS-Cで行くということ
うむ。
このレンズ、いや、正直、本当に高かった。
それでも良いか悪いか16ヶ月もあったので、もっと地道に貯めておけば、もう少し無理せず貯まったと思うんですけど(でも16ヶ月×月1万貯めないといけないのでやっぱり高いな)、それまでの貯金は発表後のKP購入で吐き出してるは、その後も、なんだかんだ言いながら途中で2本レンズ買ってるわで、もう大変でした。
一応、値段予想完璧に当てたんですけどね、予想が当たったからお金があるというわけではない(笑)この16ヶ月どこかで入るはずだったフォトコンの賞金も一切入らなかった!無念。
で、となるとですよね、このレンズが最大限に生きるAPS-Cボディでしばらく行くぞ、ということにならざるを得ないわけです。
私の心の半分には、「このレンズが買えるなら、フルサイズのカメラ買えるじゃん?」という冷静な自分もいます。
しかし、このレンズを買ってしまった以上、そこに何かしら理屈を構築してAPS-Cで行かなければならない。それはこの11-18mmを買った者の業(カルマ)。
理論は、芸術の旅人のための地図である。コロンブスのように未知の海に向かって船出する人々に勇気を与え、踏み出す一歩一歩を自由選択の行為たらしめるものは、理論である。(「視覚的人間」、1924年)
その通りだ。我々は、理論を手に、このAPS-Cの道へとさらなる一歩を踏み出さねばならない…!
さて…こっからナチュラルに6000字くらい語るので、 …無理せず、しかし、なるべく…ついてきてください…。上で御託はいいといったんですが、こっからはもう御託しかいってません。
【御託】ごたく
―を並べる もったいぶって自分勝手なことをくどくどと言いたてる。
意味をググったら…おい、辛辣か…!
世の中は、フルサイズミラーレスの熾烈な競争が繰り広げられ、さすがのキヤノンなどはかなり訴求力の高いフルサイズミラーレスを出してきています。だから、私の心としても、買うとしたら(もちろんアストロトレーサーが使える)K-1になるわけではありますけど、フルサイズの方が良いんじゃないかという漠然とした思いはありました。
しかし、実際によくよく考えてみて、DPREVIEWなどのサイトも見つつ、色々なカメラとKPの評価を比べたりしてみると、いや、KPでも全然悪くないぞという思いもあるのです。
特に高感度と、風景向きのダイナミックレンジの広さでは、KPは、かなり優秀だといえると思います。少なくとも、実際上、星景撮影をする上で、不足はない。
APS-Cという規格。
これは、一方にはフルサイズ(とさらには中判カメラ)が、もう一方にはマイクロフォーサーズがあって、原則的には、画質的な面ではフルサイズ側に、連射や望遠、手振れ補正などに関してはマイクロフォーサーズ側に、アドバンテージがある…、APS-C…そういう意味では、そのはざまにある妥協的な規格ではある。
しかし、一面、妥協的ではあるのだけれども、裏を返せば、両方の特性の良い部分を半分ずつ持ち合わせたバランスに優れた規格ともいえるわけです。
APS-Cのバランスという思想
このバランス。
これこそが、APS-Cの本質だろうと思います。そして、このバランスこそが、私が写真を撮り続けていくうえでカメラに求めるもの(思想)でもあります。その思想の中に、理論を探し出していく。
APS-Cのバランスとは何か。
コストのバランス
一つ目のバランスとしては、まずはやはりコスト=価格でしょう。
センサーサイズが大きくなるほど、カメラは高価になってしまう。中判は明らかにレンズまで含めると一桁コストが違う感じなので、私の財政規模では論外として、実のところフルサイズならだいぶ選択肢が増えてきて、買える可能性も出てきています。ただ、やはり、それでもAPS-Cより高い。だいたい1.5倍ないし2倍くらいの出費になるでしょうか。
この1.5~2倍。カメラのボディは、ずっと最新にしておかないといけないとは思わないのですが、やはり定期的な更新を必要とする部分でもあって、ここをねん出し続けるというのが私の財政規模では、フルサイズだと難しい。…ここが理由としては非常に大きい。いや、一世代前のフルサイズ機で回し続けるという選択肢もむしろあって、そういう道も私としては良いと思うのですが(私がフルサイズ使えるとしたらこの形ですね)、星景撮影だとバッテリーグリップなどの周辺機器も欲しかったり、今度はそこにレンズへの投資も入ってくる…。
うーん。となるとやはり、まずコスト面でバランスが取れず、困難が生じることになってしまう。まずここから入ると身も蓋もないけれど、そこに残酷な事実がある…。これを基底状態として現実を組み立てなければなりません。
画質のバランス
2つ目は、画質的なバランス。
特に、星景撮影は、基本的に低照度での写真となるためノイズの問題は大きい。
ここはセンサーサイズが大きい方が、基本的には、低ノイズで優位です。なのですが、KPはアクセラレーターを搭載したことで、ここをかなり頑張ってくれていて、高感度をある程度使っていけるので、現状として、悪くない。私は一晩に色々構図を変えながらなるべく多数枚撮る関係で、あまり同じアングルで撮影を継続しないのですが、多数枚をコンポジットすれば、さらにノイズを消すことも可能です(ソフトを入れたきりあまりしてないんですけど…めんどくさがり)。
場合によっては、前回書いた、Adobeの「ディテールの強化」を選択肢にしてもいい。
もちろん、ここも、できればフルサイズが良いのですが、コストパフォーマンスを考え、画質/コストでいうと、2019年初頭現在、K-1ⅡとKPの価格差が2倍強なのですが、ではK-1Ⅱの画質が単純に2倍強良いのかというと、そうとも言えないのも、また、事実です。(まあ何をもって2倍の画質というかという問題はあります。もしかしたらISOは2倍=一段くらい上が使えるかもしれませんね、どうだろう。でもKPの6400の2倍ISO12800で撮ってるという話もあまり聞かない。そもそもそこまで上げる必要があるのかは考え所ですね)
とりあえず、今、SNSで出したり、フォトコンにプリントしたりする範疇ではほぼ問題がない。昨年の県展では全紙プリント(457 mm × 560 mm)もしましたが、ちょうどいい感じでした。あれより大きく引き伸ばすことは…今の私のスタイルだとまあないですよね。冷静に考えて…。
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環境のバランス
3つ目は、カメラワークを支える環境投資の面。
つまり、具体的に大きいのはパソコンのスペック。星景写真にとっては、撮影後の現像処理がかなり重要になるのでパソコンはどうしても必要です。ここも、中期的に見れば定期的な買い替えが求められる部分になってきてしまいますが、ファイルサイズの大容量化とそれを処理するパソコンに求められるパワーが、フルサイズ化をすると憂慮すべき懸念材料になってしまいます。
今でさえ2400万画素のKPでも、スペック的にはぎりぎりです。単枚は良いのですが、比較明合成など多数枚処理するとかなり辛いです。が、ここを長期的に考えても抜本的にアップグレードする展望は…ない!買い替えるとしても今のスペックを維持していく感じでしょう。
それに付随して、写真データの保存をどうするかということもある。オンラインストレージにアップしておくにしても、無制限に保存できるわけではない。その保存容量も問題になってきます。星の写真は全部RAWですしね。フルサイズで撮ったデータはやはり相対的に容量をくう。そういう面での困難も織り込まねばならない。
こういった環境面でのバランスという視点も必要になってきます。
システムのバランス
4つ目は、システム全体としてのバランス。
今回の11-18mmは700g台とそこそこ重いのですが、それでも、やはり、フルサイズ用のレンズよりは、一回り小さい。参考までにフルサイズ用超広角レンズのDFA15-30mmは約1㎏です。K-1ⅡはKPよりカメラのボディも一回り大きい。
その取り回しは、やはり一回りハンドリングしやすいということになります。そこは前述の三脚の性能にもかかわってきますけど、特に手持ちで撮るときの利便性にもなってくるのかな、と。そして、将来、角型フィルターを使いたいと思っているのですが、その大きさもフルサイズ超広角となってくると150mm角となって一段価格も高くなり持ち運びも大変なのですが、この11-18mmなら、海外のレビューを見るに100mm角で行けそうという情報もあります。
三脚もまあドーンと重いのでなくても良い。今回使ってみて、雲台もまあ一応は何とかなりました。良いの欲しいけど。
私のインドア体質極まる体力では、現場に機材を運ぶのもおのずと限界があるのです。なるべくコンパクトにしたい!いや、したいというか、しないと、持っていけない。
「撮り続けていく」ためのバランスという理論
と、様々なバランス。
トータルで、様々な方向から、このバランスという視点で、特長をつぶさに見ていくと、その中心にAPS-Cという規格の長所が見えてくるのではないだろうか、と。
APS-Cだからこそ、私は、機材の適切な更新もしつつ写真を撮り続けていけるし、一方で、画質的にも必要なクオリティが得られる、と。そして、撮影に持ち出すうえでも、一段軽くコンパクトで持ち出しやすいと。
そこにある種の理論を見出すことができる。
このレンズを単体で見ると非常に高価で、一時的には、このAPS-Cの絶妙なバランス感をかく乱するということもあるんですが、中期的には私の生活と釣り合っていくのかな、と。
一方で妥協的に見えるけれども、実は、バランスが取れたAPS-Cという規格のカメラがあることで、私の生活の中に、写真を撮るという行為が息づいていく…。妥協があるにせよ、ベストではないにせよ、それでも写真を撮ることと生活のバランスが釣り合いながら、この先も撮り続けていけること、それが一番大事です。
今を写し取ることしかできない、写真というメディアはその特性として、今を撮り続けることで、その意味を示していくしかないのだろうと思います。
また、芸術が、古代の壁画のように人の知恵や経験を伝えるために始まったのだとすれば、現代の撮影者もまた知や経験を集積し続けていくことによって芸術へと近づいていけるのかもしれません。そのためには、撮り続けること(それはつまり生き続けると言い換えることもできる)が、必要になるでしょう。
写真とはその一枚一枚が、現代の壁画であり、生きるということの意味を写し取りながら、撮影者自身を照らし出していくことになるでしょう。
そこに写真を撮り続けるためのバランスという理論が浮かび上がる。
PENTAXがあえて、このレンズを電磁絞りではなく、機械絞りで出してきたのは、K-1発売以前からKマウントのAPS-Cを使い続けているユーザーに向けて、という意味合いもあったと思うんですよね。(K-5系などの機体では電磁絞りが対応していない)
そういう意味では、過去との連なりの上に、この新世代APS-C用レンズがある。新世代ではあるのだが、実は写真を撮り続けてきた撮影者のためにこそ、このレンズがつくられたともいえるのです。商売という面だけからみれば、褒められたものではない(新しい機体を売った方が良い)のですが、だからこそ、評価せざるを得ない。
フルサイズミラーレス競争の中で、APS-Cという規格がどう残っていくのかというのは、一概に見通せないところではあるのですが、少なくともPENTAXがこのレンズを出したということは、APS-Cのカメラの開発も続けていく、ということでしょうから、そこは、どこまでいけるかは、ともかく、やっていってほしいなと。
私としてはどちらにせよ、しばらくは(かなり長期的に)、このレンズとともにAPS-C規格で歩んでいくつもりです。いつかフルサイズに手を出す日が来る可能性はないとはいえません。それをあえて否定はしない。ただ、今のところ、このレンズが使えるPENTAXのAPS-Cが、私の生活にバランスしている。
と、また長々と書きましたが、実のところ、なぜAPS-Cかというのは、今現にAPS-Cで撮っているという事実が生み出す認知のバイアスも多分に含んでいます。しかも、冒頭に言ったように、このレンズが買えるならフルサイズも買えるというのも道理(まあ両方は無理だとしても)。
いやもう、そのあたりも重々承知の上で、あえてさらに一歩踏み込むならば、この星景用レンズを十全に使えるAPS-Cの機体こそが、現時点で私の最大値のパフォーマンスを引き出すのだ、と言い切ってしまう他ない。
むしろ、APS-Cだからこそ出せるパフォーマンスがある。
確かに今、APS-Cの将来やさらにカメラ市場の動向まで含めて先々を見通せるわけではない。現実はあくまでカオスティックだ。しかし、すでに私は選んでしまった。この選んだ道の未来がまだ確定していないのだとすれば、バラ―ジュのいうように、理論こそが、私の選択に、明確な自由意思を与えるのです。
さあ、APS-Cの「バランスの理論」を携えて、このレンズで世界を写し、撮り続けていきましょうか。
ではまた。
今回は、ヒーターがおまけについた八百富写真機店さんにお世話になりました。11-18mmにジャストフィットするアストロアーツ社製のレンズヒーター。欲しかったので大変うれしい。KPもこちらでお世話になったご縁。
[rakuten:bckokubunnji:10523525:detail]
※星撮影用としてのレビューを書きましたのでまたご覧ください。
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