シロナガス/星景写真と科学本のブログ

「暮らしの中の星空」=星景写真+サイエンスノンフィクション書評。PENTAX使い。

宙に散る花(兼【書評】ファースト・マン 上/下)

うーむ。

よしよし。

一日、一日と2/22が近づいてくる。

 

静かにカウントダウンだな。

 

というわけで、通常更新です。今回は書評も兼ねています。

 

宙に散る花

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PENTAX KP レンズ   smc DA 35mm 焦点距離35mm

ISO2500 SS20秒 F2.4 アストロトレーサー使用 

2019.2.1 高知県室戸市にて

 

今年は、非常に早く県内の河津桜が咲いていまして、これは2月1日の撮影、なので開花自体は1月だったようです。先日佐川の牧野公園に行った時もすでに咲いていました。

これは桜にフォーカスをあわせ、星をアウトフォーカスにすることで、花びらが夜空に舞うような雰囲気にしてみました。中央右下の白っぽい星がおそらくカペラではないだろうかと思います。

 

ファースト・マン

いや、映画が公開になったのを期に「ファースト・マン」を読んだのですが…。

人類で最初に、月に降り立ったニール・アームストロングの伝記ですね。アポロ11号の打ち上げは1969年7月。うーむ、今年で50年なんですね。

 

この本は、「ファースト・マン」という神話的なタイトル(おそらくはキリスト教的な最初の人類アダムが念頭にある)をあえて採用しているのですが、中身は、等身大の一人の人間としてのニール・アームストロングを描くことに徹しているという印象。ファースト・マンと世間から称された裏側で、人間アームストロングがどういう生き方をしたのか、に焦点を当てていきます。そこに、いい意味での読者への裏切りがある。著者は、歴史学の教授で、あくまで歴史を記録するというスタンスを崩していない。その地に足をつけたスタイルが本書の大きな魅力になっています。

2012年に亡くなったアームストロングの晩年の姿も、丁寧に取材されています。「ファースト・マン」として世界中からの称賛の中で人生を過ごしたアームストロングですが、個人としては、あくまでおごらず、生涯を一人の工学人・メカニックとして歩んだ、といえるのだろうと思います。

 

本書の終わりのちょっとしたエピソードの描写が、非常に深い読後感を与えていて、とても素晴らしいので、上・下2冊の厚い本ですが、そこを読むために、通してぜひ読んでもらいたい…。グッとくると思います。

映画もみておきたいな。

 

アポロ11号のクルーが月に残してきた碑文には、「われら全人類のために平和裡に来たり」、と記されているそうです。

月を目指すプロジェクトは、アメリカとソ連の競争という側面は多分にあったと思うのですが、それでも、人類が文明を築いて以来の一つの到達点として、未踏の地であった月というもう一つの天体へ同胞を送ったということが非常に重要だろうと思います。

大きな予算がいる宇宙探査などの科学的なビッグプロジェクトにどのように予算をつけていくのか、というのは今も、これからも大きな課題だろう(プロジェクトの難易度が上がるほど、課題としての比重を増していくだろう)と思います。

本書の最後の方でも触れられていますが、科学の振興は、民間に任せる(ビジネス的スキーム)だけで進むものでもないですし、公が関わるとなるとそれは税金の使い道ということになります。その時に、いくら意を尽くしてその意義を啓蒙しようとも、経済格差と分断が広がる社会では、民意の合意をとりつけることは困難になるでしょう。どこに予算を使うかという時に、宇宙探査より、明日の暮らしを何とかしてほしいといわれれば、それはその通りとしか言いようがない。

人類が、今以上に科学の発展に進んでいくことは、まずは前提として、より格差の少ない社会を追求していくことなくしては、見通せない。そして、また格差のない社会、いいかえれば、次世代に等しく教育を受ける権利が保障され、その後も一人の人間としての可能性が最大限に汲みつくされるような社会をつくることで、科学の水準が全体として上がっていくのだろうと思います。

そういう意味では、現在の世界は、まだ随分、人類の可能性を持て余していますね。

人類が月に到達した後の50年で、科学の地平は少しずつ広がってきたと思いますが、人類にはもっと可能性があるのではないかというのが率直な思いです。

 

しかし、この本を読んでいると、月に行くということは、それこそ人類にとって「大きな跳躍」だったと思うんですが、それにしても、同僚の宇宙飛行士が亡くなる確率が非常に高い。本当に命がけの仕事ですね。地上の作業中や、航空機での訓練中に、打ち上げや着陸時の不意のアクシデントで亡くなってしまう。過酷。

そんな宇宙飛行士の魂への安息の祈りも、写真の題名に込めて。

 

冬のさなかに咲き散りゆく桜も、冷たい宇宙の中でひと時生まれ出でた人類も、同じように儚いし、同じくらいに強い、というふうに思います。

 

ではまた。

 

追記

そうそう。なぜかここにきて、PENTAXが、KPのカスタムパーツを世に送り出す計画が検討段階に入っているぽい。

一年前に、社内デザイナーさんがカスタマイズしたのを公開したのがきっかけですね。

あれを見て、カスタムグリップをつくったのでした。

カメラを持った時に楽しいのかどうかというのは、非常に大切な価値だと思います。あえて、こういう部分に突っ込むところは、素晴らしい。

 

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