梅雨の季節、カタツムリを見る機会が多いが、実は、彼らは身近にいながら謎の残る生物なのだという。
800種にも分化した日本のカタツムリ
カタツムリ。なんと日本に800種もいるらしい。
なぜこれだけ種類が多いか。進化の仕組みから考えれば、種分化をするためには、それぞれの個体群が十分に隔離される必要がある。
カタツムリの場合、移動能力が低く、小川などがあっても、移動がそこで止まってしまうために、この種分化が起こりやすいのだそうだ。
実は、私が、岡山に宇宙セミナーに行っていた際、立ち寄った倉敷自然史博物館で、倉敷に固有のカタツムリの展示がされていた。見た目は同じように見えても生殖器である恋矢の形が違うのだそうだ。
確かにそれでは交配できない。交配できないということは紛れもなく別種ということになる。
本書がいうには、カタツムリは、まだまだ日本でも新種を発見するチャンスが残っているのだそうだ。
不思議な生態
また、身近にいながら、良く分からないことも多いのがカタツムリらしい。
移動のメカニズムなども、正確には未解明なのだそうだ。
また、カタツムリが多様に分化する中でそれを捕食する生物も合わせて進化しているというのも興味深い。
カタツムリを専門に捕食する昆虫マイマイカブリしかり、イワセキセダカヘビしかり。
巻末のおすすめ文献に挙げられてるこの本などもなかなか興味深い。
基本的にカタツムリは、向かい合って交尾するために同じ巻き方同士でないといけないそうだ。つまり圧倒的に右巻きが多い。これを捕食するヘビは、この右巻きのカタツムリに特化した捕食スタイル(牙の生え方、襲い方)を持っているという。
まれにカタツムリにも左巻きの種がいるのは逆に、このような捕食圧に対して有利さがあり、生殖に困難がある中でも(同じ左巻き同士で出会わないといけない)進化を遂げることができたからではないかという。
日本のカタツムリも、環境の変化で絶滅の危機にある種が多いようだ。カタツムリの減少は身近な自然の豊かさをはかるバロメーターになりうるのだと著者はいう。
身近だが、まだまだ不思議ないきものカタツムリ。梅雨の合間に観察してみるのもいいのではないだろうか。