4億8500万年以前。
カンブリア紀とそれをさらにさかのぼるエディアカラ紀(5億4100万年前)の生物群を紹介する一冊。
■5億年の差
まず、この約5億年という時間差のイメージが何にせよつかない。
人類の歴史が500~800万年くらいでしょうか。
概算で、100倍くらいか。
うーん。
人類史全体を、人間の人生の尺度で考えると、500万年の歴史は50歳として考えて100倍すると5000歳。
これでもイメージ尽きづらいなぁ。
時速100kmで100kmの道のりを走るとして、スタートを現在として過去にさかのぼるとすると、人類が誕生したのが1kmの地点。ここを、40秒くらいで通り過ぎて、あとは59分20秒ほど走り続けてようやくカンブリア紀。というところでしょうか。
なんとなくイメージついてきましたね。
■バージェス頁岩
とりあえず、上のホームページを見てみてほしい。
動画を含めて、カンブリア紀の生物の復元図や、化石が見える。
英語ですが、画像を見るだけでもなんとなくすごい。
カナダのバージェス頁岩(けつがん、と読む)といわれる場所から出土する生物群からカンブリア紀の生物がみつかったことからカンブリア紀の生物の研究が進んできたようだ。
今では、中国などでも見つかっているらしい。
恐竜などとは違って骨組織のない当時の生物群が、化石として残るにはかなりの幸運が不可欠であったようで、バージェス頁岩などは、非常に貴重な存在だ。こういった採掘場所を、本誌ではカンブリア紀を除く「窓」と呼んでいる。
■カンブリア紀とエディアカラ紀
この本では、いわゆる「カンブリアの大爆発」といわれる生物種の爆発的多様化の意味を問い直す。
カンブリア以前、エディアカラ紀にすでに、多数の生物種が生まれていたことが明らかになっており、その意味で「原生動物よりも多数の動物群が、突如として出現した」(古生物学者グールドの言)といういわゆる「大爆発」のイメージは書き直される必要がある。
カンブリア紀の大爆発は、要約すると
・それまで発達・多様化していた、内部的な器官に合わせ生物が見た目も派手に、アクティブになっていった。
・うろこや殻など、硬質化していった。
ということらしい。
■光スイッチ説
光をみる目の発達に伴って、このように進化したのではないかという仮説を紹介している。
捕食者に対する威嚇としてとげをもつ、また、海底(より深く)に逃げるなどの様々な進化が起こった可能性があるという。これは、見た目の変化、また生物の生息場所を深海へと広げていくことにもつながっただろう。
そして、地球環境からみると、カンブリア紀の当時、大きな地殻変動があり、それは、大不整合と呼ばれる地層の不連続性でわかるようだ。
大不整合によって陸にあがったかつての海底から、雨などを通じて、カンブリア紀の生物群が硬質化する材料となるマグネシウムや、ナトリウム、カリウム、カルシウム、鉄などのイオンが大量にとけだし、海に供給されたことがカンブリア紀のある時期から生物が硬組織を持ち始めたことを説明する。
カンブリア紀以前の生物群というのは、まだまだ、議論が活発な研究分野のようで、謎の生物もいる一方、現在の生物種とのつながりも、少しずつ解明されてきているようだ。
カニやエビの祖先となる節足動物の発達など、事例をあげて書かれている。
この本は、カンブリア紀以前の動物群の復元図、化石の写真も豊富で、興味をそそられるつくりになっている。連綿と続く、あまりに長い進化の歴史の向こう側をのぞいてみるのも楽しいのでないだろうか。