うむ。
今回は、タイトルのソフト、DxO PhotoLab5(以下、PL5)が、私の星景写真現像における比重をかなり高めていまして、いい機会なので、自分用も兼ねて、まとめておこうかと思いまして、筆を執りました。
いつもの基本情報ですが、私は、(基本的には)1枚撮りの星景写真をメインジャンルとして撮影を続けています。今回のPL5のまとめも、星景現像としての(私の)使い方ということになります。
とりあえず、スライダーを。
左の画像を、右の画像のように仕上げていきます。
元画像は、ISO12800、月も出ておらず、環境光も少ないので、前景はほぼ闇です。ここから、現像していきます。ということで、では、さっそく。
星現像用としてのPL5
まず、Lightroom Classic(以下、Lr)で元画像を開き、PL5に連携して、処理をします。
①LrからPL5に転送
ファイルの、プラグインエクストラというところから入り、PL5に転送を選びます。
②PL5で基本的な補正を当てる
上記はPL5の画面です。
ワークスペースをアドバンスにしておくと、パラメーターが一列にまとめられて便利です。(2つ下の細長い図を参照)
上図の右側の表示が、下図のような感じになっています。
では、ここから、補正です。
順次、上から行きます。
PL5による補正の一例ということで。
1、DxO Smart Lighting
まず、「ライト」の項目から。
全体の明るさを自動的に調整します。
今回は、元画像がかなり暗いので、ONにしましたが、ここは任意です。
様子を見ながらONかOFFか選ぶ感じです。
2、DxO ClearView Plus
基本的にOFFで良いように思いますが、かすみを除去してディテール感を高める機能です。
星景に使うと、かなり、空(星)が荒れる感じになってしまいます。
3、ヴィネット
周辺減光を明るくする機能ですね。
これは、レンズによるんだろうと思うのですが、PENTAXのHD DA★11-18mmに使うと、周辺が明るくなった場所に帯状の光輪のようなものが現れて、相性が悪い。
ので、OFFで、いきます。
レンズに応じて試してみてください。
4、DxO Denoising Technologies
次に、「ディテール」の項目。
ここが最重要項目ですね。
AIによる、ノイズ除去機能。強力です。
これを使いたいがために、PL5を導入しているといっても過言ではない。いや、過言ではないどころか、これのためのPL5です。
3つのノイズ除去機能が並んでいて、右に行くほどPCへの負荷も強いですが、高ISOの写真の場合は、少々時間がかかっても右端のDeepPRIMEを使います。
輝度の項目は、デフォルトが40になっているのですが、とりあえず、そのままいきます。
【2022.02.06追記】微光星を消さずにノイズ除去をかけるためだろうと思うのですが、空部分のノイズがまだら状に処理されてしまう(ノイズ除去が強くかかってツルツルになった場所と、輝度ノイズが嫌な残り方をした場所がまだらに出る)ことがあります。その時は、輝度の項目を下げると良い結果が出る場合があります。
私の場合、具体的には、10~15程度に下げます。ノイズ除去能力は下がりますが、致し方ない。
DeepPRIMEを適用せずにそのまま、Lrでシャドウ部を持ち上げたのが左。DeepPRIMEを適用してから持ち上げたのが右です。
かなりノイズ状況が違うのが分かるでしょうか?
ただ、ノイズがなくなった画像が最終系で完成なのかというとそれも違って、最後、出力環境(モニターなのか、プリントなのか、鑑賞サイズは?など)によって、粒状感などをコントロールしてディテールを最適化する必要はあります。
そして、もちろん、毎回、このノイズ除去を使う必要はありません。ノイズがそんなに出ていない写真には当然当てる必要はないです。
ただ、今回は、高感度(ISO12800)の画像で低輝度(暗闇)から前景をあぶりだす、という形になるので、この機能が効きます。
5、レンズシャープネス
この項目も重要なのですが、星景にこれを当てると細かな星に強調処理が適用された結果、背景のノイズまでいっしょに強化されます。なので基本的にOFFです。
画像の一部を切り出しています。左がレンズシャープネスをON、右がOFF。
うーん。差が見えるか、微妙ですが、ONは、いわゆる星空の背景の輝度ノイズが強調されてしまっています。
この機能は、星が相手ではない場合、例えば、鳥、あるいは月などを撮ったような場合は、レンズの解像感を最大限引き出してくれるので、そういう場合は有益なのですが、星には微妙…という判断です。
6、色収差
色収差の補正。
当てて悪いものではないので、当てておきます。ON。
7、ディストーション
最後に「ジオメトリ」の項目。
歪曲収差を補正します。Lrでレンズプロファイルをかけるよりも、正確な気がするのですが、これは好みで。
歪曲収差もレンズの味ではあるので、残して良いかもしれません。
あるいはLrでレンズプロファイルをあてるということでもよいでしょう。
今回はOFFにしました。
③Lrにエクスポート
これで、補正のパラメータ設定は、完了です。
あとは、書き出し。
PL5の特徴の一つとして、RAW画像(DNGファイル)をRAWのまま、編集できます。
Lightroomにエクスポートを選択すると、上のダイアログボックスが出てきます。
ここで、DNG形式でエクスポートする(全ての補正を適用)を選択し、下のエクスポートを押して、書き出されるのを待ちます。
うちのPCの性能では、ここからの書き出しに一定の時間がかかりますが、まあ、焦らずに待ちます。
完了すると、Lrの画面が立ち上がって、元のフォルダに、新しいDNGファイルが生成されます。
④Lr等で補正をして完了
ここまでで、下処理(ベースメイク)が完成したという状態です。
後は、通常のLrの現像処理をしていきます。
今回は、Lrだけで仕上げていますが、ここから、さらにNik collection4と連携したり、Photoshopと連携することももちろん可能です。(PL5からNik collection4に直接連携することもできます)
Nik collection4のこともまとめないといけないと思いつつ、フィルターの数が膨大過ぎて、全容を把握していないので、またいずれ、まとめたい、な、と…。
ということで、完成しました。
上の明るい星はシリウス。その下、水平線近くに、(オレンジに見える)カノープスが昇ってきています。
ISO12800とPL5を組み合わせることで、月のない夜も、前景を持ち上げることが可能になりました。
ですが、もちろん、前景をシルエットにしてしまうのも、一つの選択肢です。その方が写真として印象的になる場合も多々あると思います。
PL5、…星景写真に、有効な選択肢を与えてくれる頼れるソフトだと思います。
長所
まとめておきましょう。
まず、長所としては、強力なノイズ処理が一番に上がります。
そして、それだけならDxOが提供するPureRAW(RAW画像のノイズ処理等に特化したソフト)の方が安いのですが、PureRAWでは、今回切った各種補正を柔軟にON/OFFできないということがあり、星景用にということになるとPL5が選択肢になります。
サブスクリプションではなく買い切りなのも、プラス材料です。
短所
PureRAWに比べて少し高い。
ここは、PureRAWで問題ないと感じるなら、余計な出費になります。両方とも一ヶ月トライアル出来るので試してみたら良いかもしれません。
また、PCのマシンパワーもそこそこに使います。うちのようなcore i3でグラフィックボードもついてないような環境だと、DeepPRIMEの処理に数分は待たないといけません。
このあたりが許容できるなら、お勧めです。
それと、蛇足気味ですが、実在論的な見地から見て、どこまでのポストプロセッシングが写真に対して許されるのか、というのも、考えておかないといけないかもしれません。これは、本当に自分用で、誰かに何かを求めるものではありません。自分が納得できるかどうか。
私の当面の結論としては、実在的世界に嘘をつかない、ということが基準になるだろうと思っています。その基準で言うと、別の風景を組み合わせることなどは(芸術写真としてはありだとしても)NGと考えないといけないし、被写体を一部消すor足すなどの操作もNGでしょう。ただ消してしまうにしても、トリミングでということなら、それは、ありでしょう…、と、ケースバイケースで、自分の中の評価軸でその都度理屈を立てていくしかないですね。
ということでした。
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ここで、DxOソフトの導入の顛末を書いています。
ではまた。